「過去と現在、生と死、現実とフィクションが綯交ぜになる多様性そのものの作品」ファビュラスな人たち よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0過去と現在、生と死、現実とフィクションが綯交ぜになる多様性そのものの作品

2022年11月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公は5人のトランスジェンダー。彼女達の友人アントニアは自分が死んだらグリーンのドレスを着て埋葬されたいと願っていたのに心ない遺族によって男性の正装姿で埋葬されたことを知った彼女達はアントニアの無念を晴らそうと30年前に共同生活をしていたヴィラに集まる。当時から手付かずのまま放置されていたヴィラには彼女達の思い出の品が沢山残っていて思い出話に花が咲くが・・・からのおかしくも切ない物語。

過去と現在が入り混じるだけでなく生と死の判別もつかないような映像にはいかがわしさと懐かしさが宿っていて、社会から蔑まれながらもお互いに助け合って生きてきた彼女達の気丈さと繊細さによく似合っています。ひとしきり思い出に浸った彼女達が始める儀式に一瞬ギョッとしますが、既存の宗教では救われない魂の救済にはそれしかないという現実を突きつけられて胸が痛くなります。

実際のインタビューとドラマを組み合わせた本作は現実とフィクションの境目も曖昧にしていて、実に多様性に富んだ印象的な作品でした。

よね