ウェスト・エンド殺人事件のレビュー・感想・評価
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様式を愉しむ映画
アガサ=クリスティのオリエント急行殺人事件を映画やドラマで何年かに一度のペースで見かけるのだが、あの意味が分からなかった。あれほど有名な作品を焼き直す必要があるのだろか?もちろん犯人も皆さんご存知の通りだし。
本作は、そうしたフーダニットな(犯人は誰だ!的な)芝居を上演中の劇場で、フーダニットな殺人事件が発生するというもの。事件解決に当たるのは、ベテランだけどどこか抜けてる警部と、一見ダメダメだけど切れ者の新米婦警のコンビ。よくあるよね?そういった凸凹コンビ。
そう、これは、誰が犯人かを見つけるフーダニットな映画ではなく、フーダニットな映画ってこうだよねーってシチュエーションを愉しむ映画なのだ。
映画はJALの機内上映で鑑賞。主演二人の軽妙な芝居で機内上映作としては十分楽しめました。
映画館で観てたら物足りなさを感じたかもしれないけど、、、
見直すといろいろ伏線
ANAの飛行機のなかで見たのでレビューとかできるレベルの鑑賞でもないんだけど。
それなりにオシャレで、それなりに皮肉で、それなりに構造的。
あらかじめ用意された枠組みがあって、それをなぞりながら進んでいってる、というのがオチ的にわかってくるという作り方。
原題のSee How They Runって、そんな意味もあるのかな。
小品だけど見て損はしないかな。
皮肉と懐古
本編のセリフにも「フーダニットはどれもみな同じだ」とか「よくあるフーダニットだろ?」というのがあるが、推理小説で典型的展開をするのをフーダニットと言うそうだ。
『読者や視聴者には、「犯人の正体を推理するための手がかりが与えられ、物語のクライマックスでその正体が明らかになる」といった展開が描かれることが多い。捜査は通常、風変わりな素人またはセミプロの探偵によって行われる。』
(ウィキペディア「フーダニット」より)
語源はWho(has)done it?からきていて、ドイルやクリスティやヴァンダインやクイーンや江戸川乱歩や横溝正史・・・せかいじゅうの多数の推理小説のなかで「さいごにみんなで一所に集まって謎解きが為される」というフーダニットの構成が使われている。
なお同ウィキからの情報だがコロンボや古畑任三郎のように倒叙(さいしょに犯人が明かされて、それを探偵がときほぐしていくやつ)するのをハウダニットというそうだ。
映画ウエスト・エンド殺人事件(See How They Run)は舞台劇周辺でおきた殺人事件を、でこぼこな警部と巡査コンビが追っていくコメディ+ミステリードラマ。
映画中舞台劇のねずみとりはじっさいにあるクリスティ原作の舞台劇で、1953年の公演時を映画の時代と背景にしている。
『ねずみ取りは、アガサ・クリスティによる殺人推理劇。1952年にロンドンのウエストエンドで開幕し、2020年3月16日まで連続上演されたが、COVID-19の大流行で舞台公演は一時中止を余儀なくされた。その後、2021年5月17日に再オープンした。ウェストエンドで最も長く上演され、2022年11月時点で28,915回目の公演が行われており、世界の演劇の中で圧倒的に長い公演期間となっている。セント・マーティンズ・シアターの観客は、劇場ホワイエの木製カウンター(公演回数を示す)の横でよく写真撮影をする。 2022年時点でロンドンでは1千万人がこの舞台を見ていると言われている 。』
(Wikipedia「The Mousetrap」より)
フーダニットの舞台劇周辺でおこった殺人事件をフーダニットで語る映画。そこに先輩と新人のバディ値をからませた。抜けきらないが丁寧な映画で、A~Fまでのスケール中B-の肯定評(by CinemaScore)は頷けた。
ただし、不慣れな新人巡査役という設定のローナンが(個人的には)圧倒的なミスキャストだった。ロックウェルのヨレた警部役はそのままだからいい。だがローナンの顔からは賢さしか読み取れない。「ちょいちょいドジを踏む新人」という定型配役に振るには真逆のパーソナリティ。コミカルな台詞がその陶器のようなゲルマン顔をつるつるスベった。
ところで先ほど引用したウィキのフーダニットで以下の記述を見つけた。
『イギリスの殺人ミステリーにおけるありきたりさに反発したのが、レイモンド・チャンドラー、ダシール・ハメット、ミッキー・スピレインなどに代表されるアメリカの「ハードボイルド」犯罪小説であった。舞台はより荒々しく、暴力はより多く、文体はより口語的だが、プロットは多くの場合、「居心地の良い」イギリスのミステリーとほぼ同じ方法で構成されたフーダニットであった。』
(ウィキペディア「フーダニット」より)
進歩的な作家がありきたりな種明かしの構成をはげしく嫌う──という現象は聞いたことがある。ただし推理小説というものは、種明かしをしなきゃならない。だからフーダニットを嫌って変則を加えてもけっきょくフーダニットになることに変わりはない──ということを上記は述べている。
とはいえフーダニットとは終局に応接間に集まって探偵が詳説する──といった典型的なものを指して言うのだ。
ロックウェルが演じたストッパード警部は世やつれと諦観がありチャンドラー風だった。生粋のアメリカ人ロックウェルを、ロンドンの警部役に充てたのは反フーダニットのアクセントだったにちがいないし、フーダニットな空間設計を懐古しつつ皮肉った映画でもあった。
なおU-Nextで399円でした。
配信で観るには・・・
ストーリー的には「そんなもんですね」って感じ。
サム・ロックウェルとシアーシャ・ローナン2人の軽妙な掛け合いが
この映画をオシャレに魅せてくれるってこと。
残念ながら日本では劇場公開されないけど
配信で観るにはちょうどいいかも。
"結論を急ぐな"
言ってしまえばなんてことない内容の身も蓋もない作品…だけど何処かキライになれない魅力もある
サム・ロックウェル ✕ シアーシャ・ローナン = 大ッ好きな2人が肩の力抜いて楽しげに挑む往年ミステリーへのパロディ(リスペクト)に満ちたユル〜いコメディ!! 最高すぎるタイトルと最高すぎるキャスト組み合わせ、こんなの間違いなく好きに決まって…!"結論を急ぐな"。弱いけどチャーミングでそれなりに楽しめる居心地いい時間。正直期待していたよりもずっと映画的カタルシスはなく少し退屈もしたけど、かわいらしくて洒落てて(ある程度は)楽しめた。分かっててやってるのは分かってもやっぱり、ん〜〜養護しきれないところもあるっちゃある。
ウエストエンドの劇場で起こった殺人事件はよくあるフーダニット?長たらしい序盤で入り組んだ人間関係が説明されてからやっと殺人。いつも嫌なヤツが殺される。そしてくたびれた刑事が登場?お決まり。足を引きずる警部と夫に先立たれた巡査、絵に描いたように気だるそうすぎるストッパードと真面目すぎるストーカーの凸凹コンビ。復讐心の表れだ。大事だと思ってなんでもメモする、すべて書く。面白いそうですよ、私は見てませんが。そして最後には何故か都合よく雪積もる山荘に集う容疑者たち、そこで刑事は予期せぬ人を犯人だと指す。破綻してる、支離滅裂だ!はい、ここまでがセット。
個人的に嫌いじゃない波長だし、内容自体もシャレが効いている。それなりに中毒性のある軽妙なやり取りや回想に、美術や撮り方、スプリットスクリーンの多用など自虐的な語り口で紡ぐ独特なテンポ。(お笑いコンビ千鳥が一時期血迷っていた時期にしていた今からボケることを全部先に言うというネタみたいに)先に言ってその通りにすることで、敢えてアガサ・クリスティはじめミステリーの王道を皮肉る(=オマージュ/パロディ)・ネタにしてみせる。これははたまた賢さ滲み出るニヤリか?単なるテンポの悪いサブい作品か?懐かしいけど何処かちょっぴり新しいように、誰もが見たことあるような、だけど新鮮さもあるミステリー・コメディ。
ブラボー!アンコール…魅力的な往年のミステリーの味フレーバーを今一度いかが?昨今における往年のミステリーへの回帰ブームに本作も乗っかれるだろうか。ライアン・ジョンソン監督による『ナイブズ・アウト』シリーズや英国演劇会の巨人ケネス・ブラナーによる『オリエント急行殺人事件』『ナイル殺人事件』という一連のポアロ作品の映画化など、回顧主義的にも温故知新的にも「あ〜懐かしい…やっぱりこの雰囲気が魅惑的で好きだな」と思えるようなそれ。カット割りや雰囲気、作品のトーンはなんとなくウェス・アンダーソンにも似ているなと思ったら作品見終わった後に勧めてきたのが『グランド・ブダペスト・ホテル』。クッキー食べたい!
DO NOT
JUMP TO
CONCLUSIONS
Stop! In the name of law!
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