ウェスト・エンド殺人事件

解説

1950年代のロンドンを舞台に、演劇街ウエスト・エンドで起きた殺人事件の顛末を描いたミステリーコメディ。

ウエスト・エンドのとある劇場。アガサ・クリスティが戯曲を手がけた人気舞台「ねずみとり」の映画化の話が進む中、関係者のひとりが劇場内で殺害される事件が起きた。捜査を担当するベテラン刑事ストッパード警部と新人警察官ストーカー巡査は、一癖も二癖もある関係者たちの取り調べを進め、徐々に真相に迫っていくが……。

「スリー・ビルボード」のサム・ロックウェルがストッパード警部、「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」のシアーシャ・ローナンがストーカー巡査を演じ、「戦場のピアニスト」のエイドリアン・ブロディ、テレビドラマ「刑事ジョン・ルーサー」のルース・ウィルソン、「逆転のトライアングル」のハリス・ディキンソンが共演。

2022年製作/98分/アメリカ
原題または英題:See How They Run

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(C)2022 20th Century Studios.

映画レビュー

3.5気楽に楽しめるサスペンス

2023年5月7日
Androidアプリから投稿

機内映画で観賞。
爆笑まではいかないけどクスクス笑えるコメディで、機内ではいい感じで楽しめる映画だった。

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ユキ

3.0様式を愉しむ映画

2023年2月18日
スマートフォンから投稿

アガサ=クリスティのオリエント急行殺人事件を映画やドラマで何年かに一度のペースで見かけるのだが、あの意味が分からなかった。あれほど有名な作品を焼き直す必要があるのだろか?もちろん犯人も皆さんご存知の通りだし。

本作は、そうしたフーダニットな(犯人は誰だ!的な)芝居を上演中の劇場で、フーダニットな殺人事件が発生するというもの。事件解決に当たるのは、ベテランだけどどこか抜けてる警部と、一見ダメダメだけど切れ者の新米婦警のコンビ。よくあるよね?そういった凸凹コンビ。

そう、これは、誰が犯人かを見つけるフーダニットな映画ではなく、フーダニットな映画ってこうだよねーってシチュエーションを愉しむ映画なのだ。

映画はJALの機内上映で鑑賞。主演二人の軽妙な芝居で機内上映作としては十分楽しめました。

映画館で観てたら物足りなさを感じたかもしれないけど、、、

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SUZ

3.0見直すといろいろ伏線

2023年2月9日
iPhoneアプリから投稿

ANAの飛行機のなかで見たのでレビューとかできるレベルの鑑賞でもないんだけど。
それなりにオシャレで、それなりに皮肉で、それなりに構造的。
あらかじめ用意された枠組みがあって、それをなぞりながら進んでいってる、というのがオチ的にわかってくるという作り方。
原題のSee How They Runって、そんな意味もあるのかな。
小品だけど見て損はしないかな。

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tacohtk

3.0皮肉と懐古

2023年1月3日
PCから投稿

本編のセリフにも「フーダニットはどれもみな同じだ」とか「よくあるフーダニットだろ?」というのがあるが、推理小説で典型的展開をするのをフーダニットと言うそうだ。

『読者や視聴者には、「犯人の正体を推理するための手がかりが与えられ、物語のクライマックスでその正体が明らかになる」といった展開が描かれることが多い。捜査は通常、風変わりな素人またはセミプロの探偵によって行われる。』
(ウィキペディア「フーダニット」より)

語源はWho(has)done it?からきていて、ドイルやクリスティやヴァンダインやクイーンや江戸川乱歩や横溝正史・・・せかいじゅうの多数の推理小説のなかで「さいごにみんなで一所に集まって謎解きが為される」というフーダニットの構成が使われている。

なお同ウィキからの情報だがコロンボや古畑任三郎のように倒叙(さいしょに犯人が明かされて、それを探偵がときほぐしていくやつ)するのをハウダニットというそうだ。

映画ウエスト・エンド殺人事件(See How They Run)は舞台劇周辺でおきた殺人事件を、でこぼこな警部と巡査コンビが追っていくコメディ+ミステリードラマ。

映画中舞台劇のねずみとりはじっさいにあるクリスティ原作の舞台劇で、1953年の公演時を映画の時代と背景にしている。

『ねずみ取りは、アガサ・クリスティによる殺人推理劇。1952年にロンドンのウエストエンドで開幕し、2020年3月16日まで連続上演されたが、COVID-19の大流行で舞台公演は一時中止を余儀なくされた。その後、2021年5月17日に再オープンした。ウェストエンドで最も長く上演され、2022年11月時点で28,915回目の公演が行われており、世界の演劇の中で圧倒的に長い公演期間となっている。セント・マーティンズ・シアターの観客は、劇場ホワイエの木製カウンター(公演回数を示す)の横でよく写真撮影をする。 2022年時点でロンドンでは1千万人がこの舞台を見ていると言われている 。』
(Wikipedia「The Mousetrap」より)

フーダニットの舞台劇周辺でおこった殺人事件をフーダニットで語る映画。そこに先輩と新人のバディ値をからませた。抜けきらないが丁寧な映画で、A~Fまでのスケール中B-の肯定評(by CinemaScore)は頷けた。

ただし、不慣れな新人巡査役という設定のローナンが(個人的には)圧倒的なミスキャストだった。ロックウェルのヨレた警部役はそのままだからいい。だがローナンの顔からは賢さしか読み取れない。「ちょいちょいドジを踏む新人」という定型配役に振るには真逆のパーソナリティ。コミカルな台詞がその陶器のようなゲルマン顔をつるつるスベった。

ところで先ほど引用したウィキのフーダニットで以下の記述を見つけた。

『イギリスの殺人ミステリーにおけるありきたりさに反発したのが、レイモンド・チャンドラー、ダシール・ハメット、ミッキー・スピレインなどに代表されるアメリカの「ハードボイルド」犯罪小説であった。舞台はより荒々しく、暴力はより多く、文体はより口語的だが、プロットは多くの場合、「居心地の良い」イギリスのミステリーとほぼ同じ方法で構成されたフーダニットであった。』
(ウィキペディア「フーダニット」より)

進歩的な作家がありきたりな種明かしの構成をはげしく嫌う──という現象は聞いたことがある。ただし推理小説というものは、種明かしをしなきゃならない。だからフーダニットを嫌って変則を加えてもけっきょくフーダニットになることに変わりはない──ということを上記は述べている。

とはいえフーダニットとは終局に応接間に集まって探偵が詳説する──といった典型的なものを指して言うのだ。
ロックウェルが演じたストッパード警部は世やつれと諦観がありチャンドラー風だった。生粋のアメリカ人ロックウェルを、ロンドンの警部役に充てたのは反フーダニットのアクセントだったにちがいないし、フーダニットな空間設計を懐古しつつ皮肉った映画でもあった。
なおU-Nextで399円でした。

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津次郎