銀河鉄道の父 : 特集
【役所広司×菅田将暉×森七菜、感動のアンサンブル】
父と家族の“絶対的な愛”。驚くべき“実話”の強さ。
あなたはこの名演と物語に、きっと温かな涙を流す――
とはいえ本当に泣けるの?ひねくれ記者が確かめてきた
「銀河鉄道の父」(5月5日公開)。数多く公開される映画のなかから、ぜひこの珠玉の感動作を手にとってほしいです。
名優・役所広司が主演(今回はとてもユーモラスでコミカル!)し、超人気若手俳優の菅田将暉と森七菜が共演します。人気と実力を備えに備えた豪華な面々が圧巻のアンサンブルで紡ぐのは、驚くべき“実話”が生んだ究極の親子愛。観ればきっと、温かな涙が流れ出す――。
この特集では、今作が観たくなる“魅力”を猛プッシュ! 「泣ける名演・物語・原作」にわけてご紹介していきます……が、記事の後半には「泣ける、泣けると言うけれど、本当に泣けるのか? ひねくれ者の記者が鑑賞して確かめてきた」と題したレビューも掲載。ぜひ、ご一読いただけますと幸いです!
※あらすじやキャストなど基本情報はこちらでチェック!
【見どころ】日本中に届けたい、珠玉の感動作――
泣ける名演、物語…観てほしい理由は、あまりに多い
予告編やビジュアルから、“感じるもの”がきっとあるはず。珠玉の感動作たる「銀河鉄道の父」の見どころを、魅力がしっかりとわかるよう詳述していきます。
●泣ける名演:役所広司×菅田将暉×森七菜…心を打ち抜くアンサンブルに期待膨らむ
なんといっても、メインキャスト3人の存在感がすごい! “親バカ全開の父親”と“真面目なバカ息子”がコミカルに掛け合い、そこへ“しっかり者の妹”が加わり、物語は非常にユーモラスに進んでいきます。だからこそ、後半の悲劇と愛が、心をゴリッと抉ってくる――。
タイトルロールでもある父・政次郎役には役所広司。彼が出演するというだけで「この映画が観たい」と心がぐぐっと動く“規格外の名優”が、今作では明治の男には珍しく子育てに熱心で、厳格であろうと努めるも、結局は子どもにはめっぽう甘くなってしまう、愛すべき父親に扮します。どんな色をみせてくれるのか、鑑賞前からやはり期待が高まりますね。
さらに息子・宮沢賢治役は、菅田将暉が自身の髪を刈り上げて挑みました。役どころの喜怒哀楽をストレートに表現するのではなく、“菅田将暉”という独自のフィルターを通し出力することで、唯一無二のキャラクターに仕上げる稀有な俳優ですが、今作でもまた私たち映画ファンを驚かせてくれることでしょう。
そして賢くしっかり者の妹・トシ役には森七菜。新海誠監督作「天気の子」などで大ブレイクした若手人気女優が加わり、名演ばかりのスクリーンがさらなる極彩色へと変化する――3人のアンサンブルはまさしく心を打ち抜き、感動的な人間模様を映し出してくれるのです。
ちなみに、この3人が親子役で共演するのは初。“その世代で最もうまい役者”がそろったキャスト陣に注目すれば、作品がとことん面白くなってくるはずです。
●泣ける物語:どんなときでも、父は子に愛を注ぎ、味方になる…驚くべき親子の“実話”
あらすじ:岩手県で質屋を営む宮沢政次郎(役所広司)。長男・賢治(菅田将暉)は家業を継ぐ立場でありながら、適当な理由をつけてはそれを拒んでいた。学校卒業後は農業大学への進学や人造宝石の製造、宗教への傾倒と我が道を突き進む賢治に対し、政次郎は厳格な父親であろうと努めるもつい甘やかしてしまう。やがて、妹トシ(森七菜)の病気をきっかけに、筆を執る賢治だったが……。
今作は宮沢賢治という“超有名人”の無名時代がモチーフなだけに、賢治が注目されがちですが、映画.com的には“親子の物語”にフォーカスしてほしいと考えています。
予告編に収められているように、子が生まれた喜び、子育ての楽しさ、父の献身、そして軋轢と思いやりと悲劇と幸福――。「わたしが宮沢賢治の一番の読者になるじゃ。だから……」
これは驚くべき親子の“実話”をもとにした物語。何があっても信じ、味方であり続ける家族の強い思いに、胸がいっぱいになる映画体験を、ぜひ。
●泣ける映像化:珠玉の原作を、成島出監督ら最高のスタッフ陣で映画化…さらに期待大
キャスト、物語と期待がふくらんだところで、さらにワクワクする要素をご紹介!
原作は門井慶喜氏による直木賞受賞小説です。門井氏が大量の宮沢賢治資料の中から父・政次郎についての記述などをかき集め、宮沢賢治の生涯を父親の視線を通して活写。究極の親子愛を描いた“傑作”として、「深い愛に涙が止まらない」など高く評価されています。
そんな小説を、日本を代表するスタッフ陣で映像化! 監督は成島出、日本アカデミー賞10冠「八日目の蝉」などで知られ、人生の難しさや豊かさを丹念に描いてきた名匠です。さらに脚本は「かぐや姫の物語」「この道」の坂口理子が手がけ、音楽、撮影、照明、録音、美術、VFXなどすべてのセクションに最高級の面々がそろっています。
さらに特筆したいのは、製作陣の思い入れの強さです。映画化プロジェクトは、小説が発売された翌年の17年から始動。名優たちが集い、6年越しで製作がスタートしたのです。
熱い思いで完成した珠玉の感動作。……ですがひとつだけ、鑑賞前の人には素朴な疑問が生じるでしょう。それは、「本当に感動するの? 泣けるの?」。ということで、映画.comの記者が実際に鑑賞し、確かめてきました。
【レビュー】泣ける泣けると言いますが…本当に?
ひねくれ者の記者が実際に観てきたら――どうなった?
映画.comに所属するひねくれ者の記者が、今作を観るとどうなるのか? 「泣けるって、本当ですか?」とか言いながら試写に入っていきましたが、果たして……。
※以下、記者によるレビューです。
●[最初に結論]家族と親子の献身と強固な愛
身構えていても、涙なしには観られない“極めて力強い感動作”だった
泣けるかどうかは人それぞれだし、あんまり感動を押し付けられてもなあ……そんなふうに思う読者は少なくないと思う。筆者もその1人だからだ。
やや斜めに構えながら、もちろん完成した映画に敬意を払いながら、この「銀河鉄道の父」を鑑賞した。すると主人公・政次郎、妻のイチ、そして賢治、トシらの家族愛・親子愛に強く共鳴し、素直な、そして急激な感動に襲われることとなった……。
政次郎は病気の息子(賢治は幼少期に赤痢のため入院していた)のもとに走るさなか、息を切らしながら「賢治が死んだら、俺も死ぬ」とつぶやく。そんな姿に、筆者も二児の父なだけに「わかるわ……」と強く共感する。親子関係は、年代や性別を問わず多くの人が経験する事柄なため、それだけ“刺さる”シーンがなんと多いことか!
家族と親子。献身と強固な愛。一方で、子が絶望の淵に沈んだ時、親がしてやれることの無力さもまた痛感する。それでもなお、手を差し伸べるのだ。スクリーンのなかの政次郎が、劇場に座る筆者にも手を差し出してくれているような気がした。鑑賞前の訳知り顔な自分をぶん殴りたくなるくらい、ごく自然に涙が溢れ出した……。
こうした体験が味わいたいなら、なんとしても映画館へゆくべきだ。以下からはもう少し具体的に、鑑賞して“良かったポイント”を詳述していこう。
●気になる“演技”は…
浸る、驚く、好きになる! この“オーラ”は絶対に大きな画面で観るべき
本記事の【見どころ】の欄でも言及された演技について。はっきりいえば、彼らの演技を観るだけでも、鑑賞料金の価値が大いにある。
まず役所広司。威厳にあふれた風貌で、自信満々に「“新しい父親”になる。これからの世の中に何が必要かわかっている」と鼻息荒く言うが、実はこの言葉は娘からの受け売りである……など、政次郎のどこかお茶目な性格をコミカルに体現。作品ごとに変幻自在の役所だが、今作はずっと笑顔で観てしまう“かわいらしさ”が全開だ。
そして菅田将暉。自分の夢を語るときのキラキラした目、夢を追いかけるときに輝く人生を圧倒的な魅力で表現! 鑑賞前の観客に、もっと具体的に菅田の良さを語るのは野暮だと思うくらいの素晴らしさ。予告編などに目を通せば一発でわかるだろうから、申し訳ないがここではこれ以上書かない!
さらに森七菜。物語中盤に祖父・喜助(演:田中泯)を説き伏せるシーンがあるが、これが衝撃的だった。魅力的とも違う、巧いとも違う、味があるとも違う。言葉で表現すると大切な何かがこぼれ落ちてしまいそうな“オーラ”に、息を呑むほど圧倒された……。森はこれまでの作品でも魂がのった演技を度々披露してきただけに、今作を観て、松岡茉優や樹木希林に代表される“超絶演技派”の系譜なのだとはっきり感じられた。
●心に残るテーマ①:
「フェイブルマンズ」でも描かれた、家族と芸術の間で引き裂かれる苦悩…あなたならどうする?
鑑賞していて、巨匠スティーブン・スピルバーグ監督作「フェイブルマンズ」(アカデミー賞7部門ノミネート)との相似点に気がついた。スピルバーグの自伝でもある同作では、主人公が家族と芸術(自身の夢)の間で引き裂かれることが克明に描かれている。
今作「銀河鉄道の父」でも同様に、賢治が「家を継ぎ守っていく」という家族が敷いたレールと、「学びたい、芸術の道を志したい」という夢の間で葛藤する様子が映し出される。時代も国も目的意識も異なる両作品が、まるで示し合わせたかのように同じテーマを掲げるとは、なにやら不思議な縁を感じさせる。
そこで筆者が鑑賞中に考えていたのは、「自分なら家と夢、どちらを選択するだろうか。それともまた別の道を見つけるだろうか」だった。読者の皆様にも、そんなことを思いながら映画を見つめてほしい。
●心に残るテーマ②:
主人公の葛藤と成長に心揺さぶられる…“正しく悩む”ことの大切さに気がつく
今作のなかでも筆者がことさら強い共感を覚えた要素が、主人公の成長だった。家業を継がずにふらふらしていた賢治は、何者にもなれず、迷いながらも家を飛び出し東京でくすぶる。そんな折り、作家になる夢を応援し続けてくれた妹・トシが病に倒れるのだ。
誰よりも信じてくれた妹のため、賢治は再び歩き出す。何をすべきかはっきりした。書け。書け。書け。書け。目についた文房具店の原稿用紙を買い占め、自宅の机にかじりつき、マス目の外にまでびっしりと文字を書き連ねていく後ろ姿は、曲がりなりにも物書きの端くれとして生きる筆者としては、涙なくしては観られなかった。文章とは、物語とは、誰かのために書くものなのだ。
ここがクライマックスと思いきや、今作のストーリーはさらに続いていく。ネタバレになるため詳述を避けるが、“正しく悩むこと”が重要なテーマとして浮かび上がってくる。
政次郎と賢治とトシをはじめ、登場人物たちはそれぞれ抱える悩みや苦悩に対し、おざなりに向き合うのではなく、真正面からちゃんと悩み、ちゃんと苦しむ。ありきたりな映画では、これら葛藤は“乗り越えるべきこと”として描かれるが、この映画では“乗り越えなくていい。正しく悩み、苦しむことが必要”と語りかけてくれるのだ。
人生の転換点を迎える人々に勇気を与えるだろう。だからこそ今作は、ほかの映画ともまた異なる“大切な作品”になるのである。
●心に残るテーマ③:
現代につながる“強い希望”が照らす…悲劇ではなく、尊い感情を胸に劇場を後にできる
長々と語ってきたが、このセクションでレビューは最後だ。この物語には、宮沢家三世代が登場する。重要なことは、祖父から父へ、父から子へ、そして子から世界へ……宮沢家の面々がバトンをつなぎ、そして自分が親から受けた以上のことを子に注ごうと奮闘する姿である。
彼らが繋いだバトンの名は“希望”だ。それは宮沢賢治が生み出した“作品”を通じて、現在の私たちまで地続きなのだと気付かされる。劇中には「人の幸せのため」という言葉が何度も何度も出てくる。役所広司演じる政次郎、菅田将暉扮する賢治の思いが、映画を観る我々の体をあたためてくれる――。
今作は人間の尊さを感じられる渾身の一作だ。劇場を出る時、一歩踏みしめる力が強くなる。
<まとめ>笑って、泣いて、また笑って、泣いて…珠玉の感動作をぜひご覧あれ
以上、「銀河鉄道の父」特集はいかがでしたか?
役所広司×菅田将暉×森七菜によるアンサンブル、父と家族の“絶対的な愛”、驚くべき“実話”の強さ。名演と物語の感動に、温かな涙が流れ出す良作――。
ラストシーンもよすぎるし、エンドロールでは「いきものがかり」によるテーマソングが感情を増幅してくれます。人は誰かのために生きるとき、最も輝くのだとよくわかる珠玉の映画体験を、ぜひとも劇場で味わってほしいです。