銀河鉄道の父のレビュー・感想・評価
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軽妙な作風のようで、宮沢賢治の作品に漂う「死の観念」をしっかりと取り込んだ一作
予告編、劇場のポスターなどから受ける印象だと、役所広司扮する宮沢賢治の父、政次郎と賢治(菅田将暉)の軽妙な掛け合いが特徴の、気楽に楽しめるドラマのようにも見えます。
実際の本作は、宮沢賢治の一見童話的な世界に漂う死の観念をかなり色濃く取り入れており、陰鬱の淵に立つ場面も少なくありません。それでいて物語がある種の軽快さと明るさを保ったのは、間違いなく役所広司の柔和な表情と少し冗談めいた語り口を織り交ぜた演技が貢献しています。
父親の視点を通して見る宮沢賢治の人生は、稀代の文学者を一人の青年として描いている点が興味深く、宗教にのめり込んで奇行に走る姿、妹トシ(森七菜)との兄妹の関係性をも超えた絆など、宮沢賢治の伝記的な記述だけはなかなか見えてこない、彼の新たな人物像が浮かび上がってきます。また宮沢賢治の生涯に関する出来事や逸話を上映時間の枠内できっちりと整理しているため、彼の人生や作品についてそれほど詳しくなくとも、一人の文学青年とその家族の物語として十分に楽しめる作品となっています。
幾度か登場する火葬場の場面は、回を重ねるたびに少しずつ様相が変わっていくという形で宮沢賢治の死の観念を映像的に表現していて、特に秀逸です!
脈略なく歪曲された内容に、悪意さえ感じました。
直木賞受賞作である原作は未読、予告編から"違和感"だけがあったので、かえって興味が湧き、鑑賞しました。
今までの ド真面目で、病弱で、女っけない 宮沢賢治さんのイメージではなく
本作は "出来の悪い子を支える"父親目線から、描いています。
事実では商家(古着屋)である実家を どうして、質屋に舞台を替えたのか?
導きたい理由が解らない。
物語の展開において、無意味不要な小細工に思えました。
現代では かっての「質屋」を理解できない人が多いのに、鑑賞者に主人公の"農民の貧しい暮らし"をより理解しやすい立場を判りやすく表現する目的で、舞台替えをしたいならば、
日々の生活が反映される他商家に変更する事こそできた訳ですが、
そもそも 宮沢賢治さんは 農業発展への貢献を考えての地元農学部への進学と随筆活動を行ったのではなく、
大学でできた友人たちと、出会い、同人誌で文章を書き始めた事が宮沢賢治さんの人生では重要です。
また宗教活動に興味を持った事も、作品に影響を与えているとは思えません。
不要な論点です。
現代でも、執筆だけで、生活ができている人間は日本中で100人も居ないので、
当時では、執筆で食えないのが当たり前な「同人誌活動」です。
喰えない、売れない お金がない事を 映画の鍵にするのには弱いネタです。
物語に 重要でない 母親や兄弟が 徹底的に削がれている シナリオ構成は極端で面白いともいえます。
この映画を観て、宮沢賢治さんを より好きに成った人は少ないだろう。
宮沢賢治さんが、単なる 芽のでない夢見る駄目駄目人間なら、自分と重ねてみたり、親の身になる人もいるでしょう。
しかし そうはさせじと?
金儲けを企てたり。。。 宗教感をだしたり
本作は 日本文学を代表する 宮沢賢治さんを「父親の視点からの しょうもない 人間」として強調する作品に構成されている。
この映画が産むものは。。。日本の教科書から、「雨ニモマケズ」「銀河鉄道の夜」を外させる運動の機先なのか?
宮沢賢治さんが表現したかった"だろう"世界感が伝わる 素敵なアニメ映画「銀河鉄道の夜(1985)」の鑑賞を僕は勧めます。
お口直しに
DVDも持っています。 YouTubeにも上がっています。
苦も楽も、哀も喜も、全てが家族が故に。
詩人、作家【宮沢賢治】(#菅田将暉)を
誰より愛した父親をはじめとした
彼と共に歩んだ家族が描かれた今作。
宮沢賢治を知っている人は、より人間的で愛おしく思え
知らない人は、とても身近で面白く可愛い人物であったと感じるだろう。
賢治の父 政次郎(#役所広司)の厳格でありつつも、
なんともチャーミングで愛に溢れる天真爛漫さは
きっと当時は、かなり異質であっただろうが、
今の時代においては普通だと思える、いわばイクメン的な父親像は、
宮沢賢治という人が、なぜに素晴らしい作家になったかが
手に取るように感じた。
家族として人間らしく。
堂々と一生懸命に真っ直ぐ、何より愛おしみ深く。
大事な人をこれほど大事であると思えることは、幸せだが時に辛くもある。
家族であることの尊さが身に沁みて、涙が止まらなかった。
妹のトキを演じた森七菜も素晴らしかった。
もう一度、久しぶりに宮沢賢治を読んで、
彼の人生と家族に想いを馳せてみようと思った。
#成島出 監督 #坂口理子
#役所広司 #菅田将暉 #森七菜 #豊田裕大 #坂井真紀 #田中泯
賢治の幸運
二世代で商売を成功させてきた財力が、賢治にもたらした影響は多大だったに違いない。
しかし一番の賢治の人生の幸運は政次郎の息子であったことなのだろう。
わがままで奔放な息子・賢治の傍らで、父・政次郎は長男として厳しく躾けていこうとするも、側からダダ漏れしてしまうような愛情深さを覗かせる。
そんな姿に、あらあらと思う一方でクスリとしてしまったのは何故か。
それは、政次郎が賢治の生涯のどんなときも見放すことなく人間くさい愛で彼に寄り添い通した点に答えがあるのだと思う。
政次郎を見ていると、父として自分とは違う生き方を突き進んでいく息子を、自分の人生いう宇宙の中に何度もあらわれる珍しく魅力的な流れ星でも眺めるようにおもしろがっていたようなところに気がつく。
そうか…彼はその先のいつの日かにある賢治だけの個性で放つ瞬きを誰よりも信じ、悩む部分さえも眩しいほどのたのしみのひとつに変えていけれる人だったんだと。
しかも、そのひたむきな思いは押しつけることなく実に自然だったからこそ、息子の究極の〝支え〟になっていたのがわかるのだ。
ノスタルジックな映像に方言の独特な趣きが加味され綴られる物語は、静かで地味で興奮する刺激はない。
しかし、たしかに沁みてくるのは、誰かの子として、また、親として生きるかけがえのないひとときとその儚さを照らしそっと心に触れる力があるからなのだ思う。
政次郎が乗り込んだ美しい銀河鉄道はこの世に生まれて死ぬ生命のつながりに思いを馳せさせるシーンだった。
そこには、時代のなかで斬新すぎた父親像を裏表なく貫いた笑顔が誇らしさと共にあり、再会した2人への心の奥から湧くような言葉とトーンは、後に賢治を世に送り出すことになった政次郎の人柄そのものだった。
大切な人との別れのすべてを終えるとき、言葉をひとつ伝えるなら私もきっと「ありがとう」を選ぶだろう。
享受できた運命への感謝をあらわすこれ以上やさしさに満ちた響きがあるのだろうか。
追記
菅田さんの役者としての真摯な熱量にまた敬意を抱きました。
役所さんは言うまでもありませんね。
「なむみょうほうれんげきょう」
キャスト的にもかなりの大作なのに、かなり早く終わってしまいそうで残念。まだ2週目なのに1番小さいスクリーンで1日3回まわしになってたので慌てて観てきた。
宮沢賢治ってどんな人かとかそこまで知らないまま見に行ったから、最初はびっくり。脚色とかもあるんだろうけど。
いろんなことに興味持って、時にのめり込みすぎたりして、でも人一倍世の中のためになりたいとか家族のためになりたいとかっていう思いが強くて。
父親からしたらかなり大変な息子だったんだろうなっていうのがすごく伝わってきた。
曇りなきまなこで悪気なく突き進もうとする若い頃の賢治の表情がとにかく見事だったな、困った息子だけどこれは憎めないよなっていう気持ちになったもんね。
さすがすぎたなぁ、菅田さん。
南無妙法蓮華経のシーン、泣いてしまった。
ここまで映画に心動かされたの久々な気がする。
よかった。
人柄を知った上で、宮沢賢治読みたいと思った。
宮沢賢治の生き様が知れた
親子愛を静かに噛みしめる映画 でも「泣ける」とは思わない
これはね… 地味な映画でした。
つまらなくはないと思います。
2時間半、眠くもならずにみられましたし。
でも、特に派手なエピソードもなく、訥々と進みます。
家族愛を静かに噛みしめる映画です。
細かいことを言えば、史実に即してはいません。
私が知っている範囲でも明らかに異なっていたし、
念のため、帰宅してからパパッと検索してみた内容とも
だいぶ違っています。
でも、父 政次郎が主人公であり、彼の家族愛が主題なので、その部分が「実話」であれば良いわけで。
賢治の史実に即していなくとも、そこはもう、目をつぶって、フィクションとして楽しむものなんでしょうね。
なお、宣伝してる様な「泣ける映画」「感動に涙する」ということもないと(私は)思います。
静かに親子愛の有様を噛みしめる映画だと思うし、それで十分に感動でした。
変に大きな期待はしないで、静かに鑑賞する方が、この作品の良さを感じ取れるのではないかしら。
キャストは、役所広司と森七菜が良かったですね。
特に、森七菜は本当に自然な佇まいが良かった。
周辺事情からか賛否ある女優だけど、私は大好きです。
父親の愛が日本のアンデルセン・宮澤賢治を産んだ!
宮澤賢治の作品に親しんできましたが、改めて彼の素晴らしい人生も辿りました。そして父親からの視点は、とても新鮮で目から鱗でした。宮澤賢治の作品は、生きている間には、それほど脚光を浴びませんでした。しかしそれを覆して、後世に残る作品としたのは、父親の持つ深い愛情のなせる技だったと知り、涙を禁じ得ません。それから妹の存在も、大きく彼の人生の航路を変換させました。それまでの彼は、人工宝石の商売を始めようとしたり、日蓮宗に没頭したりと、自分探しでいっぱいいっぱいでした。妹の結核の発病を機に、アンデルセンの童話が好きな妹を喜ばすために、童話を作って読み聞かせたのです。それが「風の又三郎」でした。それ以降、次々と作品を作り、病にふせる妹の前で朗読したのです。思うに、妹は宮沢賢治の才能を開花させるために生まれてきたと思うのは私だけでしょうか。あの誰もが知る「永訣の朝」はその愛しい妹との別れを歌った詩として、「雨ニモマケズ」と同じくらいに私たちを泣かせてくれます。そして宮沢賢治の父親はなんて素晴らしいんでしょう。賢治を子供の頃から溺愛しますが、後年は賢治の作品の唯一最高の読者として、その面目躍如を果たします。また、賢治にとっては、この父親に褒められることが最高の喜びだったのです。さらに父親の生き方や哲学が、賢治の生き方(農業指導で農民に尽くす)のバックボーンになったのはいうまでもないことです。ですので、父親も宮沢賢治もどちらも本当に幸せな人生だったとしか思えません。
追記 この父親にとっては、自分より早く子供達が死んでいくことは、本当に辛かったと思います。それでも、エンディングで銀河鉄道に賢治と妹と乗り合わせたときの夢想は、このゆえもなく幸せの極地だったような気がしました。いずれにしても、役所広司はすごい役者です!
まあ泣けます
宮沢賢治はヘタレだった?
ありがとう
宮沢賢治って
よき家族の物語
宮沢賢治の物語というより宮沢家の物語。
その視点を賢治ではなく父親から描くことで、どう愛し育てたかを昭和初期という激動の時代を背景に当時としては珍しく寄り添い歩む親子の姿を丁寧に描いてた。
その愛情を浴びた彼が生み出すもの全てがその礎となってる様に思え、親から子への普遍の愛を紡いだ物語となっている。
賢治を支えた父、妹、弟、そして母の素晴らしさ
冒頭、汽車中で役所広司氏演じる政次郎が、長男である賢治の誕生を喜び、帰宅してから真っ先に生まれて間もない賢治に駆け寄り、田中泯氏演じる喜助から窘められる。賢治が赤痢に罹って入院したときには、坂井真紀氏演じる母のイチを差し置いて付き添い続け、自分が腸カタルに罹ってしまった。中学校に進学した賢治は、政次郎の期待に反して成績は低く、家業の修業をさせようとしたが、心優しい賢治は、却って客に騙される始末であった。森七菜氏演じる妹のトシの勧めを承けて賢治の高校進学が認められたが、人造宝石製造や日蓮宗に傾倒し、やはり家業から遠ざかってしまった。イチは、賢治の本心は政次郎に褒めてもらいたいのではないかと推察していた。「修羅」という言葉がそこで出て、後の詩集の書名にもつながり、学部生時代の恩師がその詩集にこだわられていたことを思い出した。東京の女学校を卒業し、郷里で教師になっていたトシが結核で倒れ、賢治が駆けつけて初めての作品である『風の又三郎』を書き上げて読みきかせ、やがてトシは亡くなってしまい、火葬釜が使用できずに野外で荼毘に付され、浄土真宗での葬儀が営まれていたところ、賢治は勝手に日蓮宗の弔い方で割り込み、落胆の様子を示したところ、政次郎から逆に励まされることになる。賢治の作品解説や岩手の資料館展示解説でも、トシの影響力が大きかったことは結構ふれられていたな、と改めて思い返すことであり、森氏の演技力にも感嘆したものであったし、森氏自身もインタビューで、トシが宮沢家の精神的大黒柱なのではないか、と答えている。私塾「羅須地人協会」を立ち上げて地元農民に農業についての勉強会を行う傍らで創作活動を続けている様子も描かれ、チェロの演奏場面は、『セロ弾きのゴーシュ』につながるものであった。豊田裕大氏演じる弟の清六が政次郎が引退した後、別の商売を始めて家族を支えるのであるが、風貌が賢治役の菅田将暉氏にそっくりであった。政次郎が賢治の結核罹患に気づき、実家に戻り、相談に来た農民が妻や娘を売らなければやっていけない、と訴える姿は、『グスコーブドリの伝記』で描かれた大冷害の被害にも通じるが、同様の被害が繰り返し起こっていたのだろうか。そのときの回答は連作障がいだということであったが、近代農法の限界でもあるのだろう。臨終に際して、イチが政次郎に介護の交代を申入れする様子は、それまでの政次郎の積極性の高さを示すものでもあった。政次郎が「雨ニモ負ケズ」の詩を叫ぶ場面は、原作にも史実にもない、本作独特の創作場面であり、政次郎の賢治への愛が爆発する場面でもあった。結末は、冒頭のように、汽車に政次郎が乗り、車中を進むと、賢治とトシの座席に辿り着き、『銀河鉄道の夜』の登場人物のような会話を始めるというものであった。「賢治の学校」の創設者がどう観たのか知りたい。次は、石川啄木氏を描いた映画作品を観たい。
賢治はこの人が父だから宮沢賢治になった
手のかかる子ほど可愛いと言うけど、本当に賢治が手がかかる!!
いくつになってもドリーマーで人のために生きたいと思ってて超絶良い人だけど頼りない。
対してお父さんはこの時代にはかなり珍しいタイプだろうなと思うけど、現代にも通じる理想のパパ。子どもたちを深ーく深く愛していて、信じてサポートする。何が凄いってそれを妻にやらせるのではなく、自分自身で動いてやること!
自分で世話して自分で叱って自分で確認してくれる。とても素敵だ。かっこいい。こんなかっこいいお父さん、久々にみたよ。(映画の中でも)
泣く予定はなかったのに、ハンドタオル握りしめて泣き続けてしまった。(波は何度もきた。まんまと何度も泣くハメに。)
私はとても正直にいうと賢治があまり好きではなくて、その理由が良い人すぎることと、暗いことだったのだけど、なぜそのようになったかがこの映画でよくわかったわ。
でもお父さんの愛情がものすごく深いから、子ども達はとても良い子たちに育ってて、やはり愛情は子どものその後に大きく影響するなと思ってみた。賢治も妹も人のために生きたいというのがすごい。お父さんの教えがちゃんと心で育ってた。
娘にもみせたい。
宮沢家はいい家族ですね
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