「天は自ら助くる者を助く」恋のいばら ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
天は自ら助くる者を助く
直近で観た『城定秀夫』の三本
〔ビリーバーズ〕〔夜、鳥たちが啼く〕の中では
本作がもっとも出来が良いとの感想。
先ず、同監督の特性である
女優の使い方の巧さが更に洗練。
露出度は低めも『玉城ティナ』と、
全くの おぼこ 状態の『松本穂香』、
我々が既成概念として持っている二人のキャラクターを活かした適宜な配役。
次いで場面転換の上手さには更に磨きが掛かり、
やや『ヒッチコック』の〔ロープ(1948年)〕を想起させる場面はあるにしろ、
そのアイディアとスムースさは尋常ではなく。
原作ありモノとのことで
〔ビヨンド・アワ・ケン カレと彼女と元カノと〕のタイトル中の
「ケン」は「バービー(人形)」の彼氏。
劇中、一度限り触れられはするものの、
ストーリーへの作用がどれほどのものかは
やや首を傾げる。
それは本作のタイトルの元となった〔眠れる森の美女/茨姫〕についても同様で、
ムリにいい言い及ぶ必要は無かった気もするが。
物語りは不可解なシーンから立ち上がる。
彼氏の部屋にあった稀覯本の写真集を、
自分が持ってきた同じそれと入れ替え、
元々あったものはゴミ捨て場に廃棄する『莉子(玉城ティナ)』。
あまりに理解不能な行動に、
何のために?と訝るも、最終盤になり
それこそが大きな意味を持っていたことが判明。
嫉妬や疑惑がない交ぜになった結果の見事な倒叙表現に感心してしまう。
そこに元カノの『桃(松本穂香)』が絡み、
ストーリーは予測不能な展開になだれ込む。
彼氏の『健太朗(渡邊圭祐)』に対し、
共同戦線を張る元カノと今カノは、
最初こそ疑惑解明が目的であったものの、
次第にそれとは違った絆が形成されて行く。
最終的には、一種の下司男である彼氏は手痛いしっぺ返しを喰らい
運にも見放され、との団円も、
それよりも女同志の
新しい友情の始まりが麗しい。
まぁ、こうした
外見の良さと職業柄のメリットに胡坐をかき、
多数の女性を手玉に取る男の存在は
同性からしても敵なのだが(笑)。
予想だにせぬ障壁により、
目的が複数度達せられない抑揚の付け方も上々。
見事な笑いどころでもあるし。
明かされる女二人の意外な関係性も、
男を挟んだ三角形ではなく、
あくまでも対等なカタチに収斂するのも好ましい。