「松本穂香と玉城ティナが冴えわたる!」恋のいばら おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
松本穂香と玉城ティナが冴えわたる!
今日は2023年最初の金曜日で、公開作品がめじろ押し。で、上映スケジュールを考慮して1本目に選んだのが本作。
ストーリーは、イケメンカメラマン健太朗の今カノ・莉子が、突然元カノ・桃から「リベンジポルノが心配だから健太朗から写真データを取り返すのに協力してほしい」と声をかけられ、自身も心当たりがあったことから二人は共犯関係となり、その過去がしだいに明らかになる中で、三人の関係が変化していくというもの。
序盤は、以降の展開の伏線を丁寧に描いているとはいえ、正直言ってやや退屈な印象でした。そんな中、オーラを完全に消し去った松本穂香さんの演技が光っていました。図書館に勤め、自宅は物であふれかえり、今カノの莉子を探し当てて協力を迫るという、地味で内向的でヤバめな元カノ・桃を完璧に演じていました。
一方、桃と対照的な今カノ・莉子を、玉城ティナさんがこれまた素敵な演技で魅せてくれます。ダンサーを目指してストイックに励み、健太郎との恋に幸せを感じつつも、桃の出現により心にさざなみが立ち、それがしだいに大きくなっていく感じがよく伝わってきました。
そんな二人の共同戦線の様子がなかなかおもしろかったです。今カノと元カノが仲よくなる構図はなくはないとは思いますが、莉子が桃への距離を近くしていったのは、それだけ健太朗から心が離れていったということなのだと思います。
そしてここからがおもしろくなっていくのですが、桃の口から明らかになっていく真実と、それを受けて語られる莉子の思い。普段の表情や言葉といった表面的なものだけでは読み取れない、心の奥の本当の思いが露わになってきます。愛情、不安、恐れ、嫉妬、焦り、悲しみ、怒り…。誰かに恋するということは、同時にこんなにさまざまな感情を引き起こすのだということを改めて見せつけられた気がします。これがタイトルにつながっているのでしょうか。
ラストにきて、序盤の写真集にまつわるシーンが効いてきます。莉子が、自ら用意した写真集を置き、桃がプレゼントしたものは捨てるという心理。健太朗が、これまで撮影した多くの女性たちの写真をコレクションのように整理する心理。「女の恋は上書き保存、男の恋はフォルダ保存」とよく聞きますが、まさにそれです。きっと莉子も桃も、これから新たな恋で健太朗のことは上書きしていくのではないかと思います。
主演は、松本穂香さんと玉城ティナさんで、その演技については前述のとおり。健太朗役は渡邊圭祐さんで、仮面ライダージオウのウォズ以来、すっかりイケポジが定着した感がありますが、本作でもきっちりハマっています。
2023年の1本目の鑑賞作品としてはまずまずといったところでしたが、観客は2人だけというほぼ貸し切り状態のおかげで、思った以上に満足感を得られました。