「100年の答えが‥‥これ?」ウィッシュ kou-sukeさんの映画レビュー(感想・評価)
100年の答えが‥‥これ?
何となく忙しくて、映画館に行けず
Disney+に来るのを待っていた100周年記念作品。
残念ながら、悪い意味で期待通りの作品だったと思う。
良かった点としては、楽曲の良さがあるが、
それでは擁護しきれない歪みを感じる
大きく3点、この映画の問題をまとめてみた。
①願いの役割
②悪役の魅力
③主人公の行動
以下、それぞれについて語っていく。
①願いの役割
ロサスは国王の魔力により建国された国であり、王は統治目的で願いを集める。
国に益をもたらす願いは叶え、思想家や反乱の目が少しでもありそうな願いはそのままにする。
確かに王の意思のみで願いを管理されるのは不幸せかも知れない。
しかし、この願いがあろうがなかろうが、ロサスは幸せな国だと紹介される。
観光も外交も上手くいっているのだ。
もし国民の中に潜在意識の願いとして「王位を奪いたい」と言う輩がいた場合、それを早期に摘む事が出来るのであれば、願いを預かると言う王の政策は素晴らしいと思う。
結局、本作での願いの立ち位置が不明瞭なのだ。
願いがないと早期に死んでしまうとか、願いがないと凶暴性が増すとか、
衣食住や国防よりも、願いがある事のメリットや、失ったことによるデメリットを明確にして欲しかった。
②悪役の魅力
国のために尽くした王が、呪われた魔導書に支配されて人々の願いの力を悪用する。
そこまでは良い。ただ、その描写、もっと丁寧かつ大袈裟に出来なかったのか?
マグニフィコは多少の傲慢さはあるものの賢王とも言える。
国に尽くしてきたはずの彼の最後が、ただの俗物のごとく鏡の中に落とされるのは如何なものか?
ただ排除して終わりが100年の結末なのか?
ここの描写は、いっそ魔導書に呪われたマグニフィコを救い、改心させる方向へ進むべきだったと思う。
③主人公の行動
むしろ、この話の一番の悪役とも言える。
彼女の行動原理は
・祖父の願いが叶えてもらえなかった事
・叶わぬ願いを返してもらえなかった事
から始まる。
そんな彼女が星に願いをかけると、本当に星が降ってくるのだが‥‥
まず、主人公に力を与えるスターは、表情と仕草だけなので、何故主人公に味方するのかが分かりづらい(たぶん自由な星への願いを阻害しているマグニフィコへのカウンターだとは思う)
7人の友達は主人公の味方だったり敵だったりするのだが、特段見せ場もない。
国は上手くいっているのに、祖父の願いが叶えられないと言うだけで、彼女は反乱を起こす。
ここで怖いのは、自分の正しさに一切の疑問を抱かない事だ。
彼女は国統治の難しさも知らないティーンエイジャーが、個人の価値観のみで国を傾けようとするのだ。
しかもそれが原因で王は悪意に飲まれてしまう。
幸せだったロサスを壊したのは、どう考えても彼女である。
個人的には、随所で残念な思想のようなものが見え隠れしたのも悲しかった。
いっそ、中盤までの展開は同様でも良いから、
叶えようと思った祖父の願いが悪意の塊だったり魔導書の影響で悪意に飲まれたりして、自分の立場に苦悩して欲しかった。
どんな願いも、暴走したら相手を傷付ける‥‥と言う内容から、それでも人を信じると言う落とし所にでもしてくれれば、見ている側も腑に落ちる内容だったかと思う。
シンプルな話が悪い訳ではない。
ただ、キャラクターが脚本としての役割しか与えられていない事が良くない。
もっと、キャラクターが生きていて欲しかったのだ。
それが、本作には圧倒的に足りなかった。
勿論、楽曲や描写の良さは多々あったので、
次回の作品は、よりエンターテイメントを意識した作品になる事を願う。