劇場公開日 2023年6月9日

「(6/18追記)結局、荒れるか荒れないかしかないけど、意見に「理由をもって」いるかも重要。」リトル・マーメイド yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5(6/18追記)結局、荒れるか荒れないかしかないけど、意見に「理由をもって」いるかも重要。

2023年6月10日
PCから投稿

今年186本目(合計837本目/今月(2023年6月度)11本目)。

 ※ この手の映画では珍しく、日本語吹き替え版が事実上強制されるということがなく、英語版で見ることができました(なお、一部英検1級レベルの英単語が出てきます)。

 ストーリーについてはもう多くの方が書いているし私が書いても二番煎じにしかならないのであえてカットします。

 ここや他のサイト(映画評価サイト)でも大荒れな「ポリコレ論」に関することです。
個人的には今回は「アウトかなぁ」という気がします。ただ、それだけなら誰だって言えます。
一応にも法律系資格持ちなのだから、言うだけではなくて納得できうる理由を示さなければなりません。

 さて、この映画をよく見ていただくとわかるのですが、年代に関する描写は一切ないものの、「イギリス」「スペイン」「キューバ」「ブラジル」「貿易」といった語が出るほか、貿易船等が出てきます。つまりこれらが述べるのは、日本の高校世界史等で学習する、いわゆる「大航海時代」が背景にある、ということです(陸上側において)。一方、当然海面の世界は架空の世界ということになります。

 ※ これらの単語は明示的に出ますので、「いや、別の太陽系の惑星にある「スペイン」という国なんだ」とかという言い訳は通らないものと思います。

 そうすると、高校世界史でも学習しますが、大航海時代で新大陸を「発見」したことによって貿易は栄えましたが、「発見された」側の大陸等での扱いが凄惨なものであり、いわゆる例えば黒人の奴隷船等をあげることができます。ところがよーくみると、「人間側の世界」でも黒人の方は(高貴な身分役の方などで、普通に)いたりします。あれれ?いいんでしょうか…?

 このことは日本であれば高校世界史で習う内容なので、「あれなんでこういう展開なの?」ということは、実際に授業で習った内容を応用してみれば「あれれ?」ということはすぐわかります。「学校で習った内容がすぐ生かせる良い例」だと思います。大人の方も年代に差はあれこのことは知っているでしょうから、上記の前提を置くと、そもそも公式はポリコレ論を問題にしたかったのかしていないのか、それすら怪しかったりします。

 ※ 要は、「それらを論じる前提として、8割がたでも歴史認識が正しいか」ということがないとまともな議論はできません。

 つまり、この映画において「ポリコレ論」がどうこうを論じることは、実は上記の「大陸パート」(名前が難しいですが、要は海以外の全部のパートって考えていただければ)の扱いがどうなのかを考えなければいけないところ、一般的な高校世界史で学習する範囲だとあり得ない状態になっていて、???状態になっています。

 もちろん現在においても争いがあるなどいくつかの説があるなどするものは仕方がないといえますが、このことについては教科書の記載は多少の差はあっても同じであるはずで、それは海外であってもそうであるはずです。

 この点が何ともなぁ…というところがあり、「ポリコレ論を論じるべきものかそうではないのか」もはっきりしなかったりする、という特異な映画です(この点は、「ポリコレワールドじゃないのか」と揶揄された「ストレンジ・ワールド」と違い、明確な史実が存在し、それを参照できる、という別の論点があるのです)。

 さて、みなさんの考えはどうでしょうか…。

 採点は以下の通りにしました。

 ---------------------------------------------------------
 (減点0.3/どうとらえるとしても、やはりポリコレ論の問題にはなる

 ・ 私も資格持ちなので、「理由があるのであれば」「多少の」ポリコレ論は許容するしここに投稿するときにも配慮もするし減点対象にもしません。ただ、放映したらしたっぱなしで何も説明がないので…。

 ディズニーさんの映画といえば、7月だったか8月がったか、4大精霊が暮らす市で仲良くなるとかならないとかという趣旨の映画がもう1つあったかと思いますが、そちらもそうなのかなぁ…と思うと、ちょっと今から心配です。

 一方、主人公は車いすの子でお父さんは知的障害で…みたいな、「ポリコレが極端すぎる」世界が来ないことを祈るばかりです(この例にしても、「合理的な説明があるのなら」減点は一切しません)。
 ---------------------------------------------------------

 (以下、6/18追記事項)

 ・ 本日(18日)、他の映画を見るために映画館に行ったのですが、本作品はまだまだ放映されており、当然その関係や、(他の作品のウェイトの関係で)公式グッズが多めです。

 ただ個人的に気になったのは、これら公式グッズの中でも、主人公が白人のもの(原作重視のもの)と今回の映画のもの(本作重視のもの)が混在しており、ここも「大人の事情なのか…」と思ったものの、当然この映画は小学生(特に女児)が見ることも当然想定されますが(それを明確に意識した女児向けグッズもあった)、「映画内で出てくる主人公と、このグッズ(タオルなりコップなり)に出てくる人が(人種上)違う」等という疑問を投げらえても、保護者は回答に窮するのではなかろうか…と思われます。

 要はこういったグッズ(グッズってそもそも、映画作成会社に一定の売り上げの取り分はあると思いますが)まで、実はこの「ポリコレ論」が波及していた、というのは、正直気になったところです(絵本で読み聞かせするなら、原作「人魚姫」を読む家庭も想定できるので、ますます混乱してしまう)。そして当然のごとく、女児を中心とした低学年層にポリコレ論を論じても意味がなく(理解がそもそもできない)、結局、このグッズのこと一つ取り上げても「なんだかなぁ」というところです。

yukispica