劇場公開日 2023年2月10日

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「ハリウッドによるハリウッドな作品」バビロン shantiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ハリウッドによるハリウッドな作品

2023年2月14日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

デイミアン・チャゼルという監督は正統派な作品を撮る監督だと思う。冒頭の乱痴気パーティーのシーン、ヴィスコンティの「山猫」の舞踏会シーンのオマージュだと思うのだが、頽廃的な要素が目一杯であるにもかかわらず、何故か明るく乾いた感じがした。暗さと陰湿さと変態さに欠けているのだ。ヴィスコンティが撮ると美しい舞踏会のシーンも何故か頽廃し、秘め事を盗み見する後ろめたさがある。チャゼルには後ろめたさがない。マーゴット・ロビーも明るい、底抜けに明るい。この作品自体が燦々と降り注ぐ陽光の中で撮られた全く後ろめたさのない青春映画のように思える。ハリウッドという場所がそうさせるのか?人間が本来持っている暗さにもスポットが当てられ、明るく照らし出されているのだ。度肝を抜かせるための汚らしく、際どいシーンも幾つかあるのだが、後ろめたさに欠けるため、ありきたりのシーンに私は思えた。ハリウッド黎明期から黄金期へと向かう歴史譚の中の悲惨な要素さえも明るく照らし出された大掛かりな青春映画だというのが私の忌憚のない感想だ。

shanti