「世界で最も魔法に満ちた場所 …"クソ"に踊れば、映画愛の虹がかかるやも?もう一つの『ワンハリ』で『雨に唄えば』そして『ニュー・シネマ・パラダイス』!」バビロン とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
世界で最も魔法に満ちた場所 …"クソ"に踊れば、映画愛の虹がかかるやも?もう一つの『ワンハリ』で『雨に唄えば』そして『ニュー・シネマ・パラダイス』!
金のかかった散漫とした混沌と喧騒、人生狂騒曲!市井の人々が暫しのあいだ夢見る映画の醜く汚い内幕劇をド派手にバカバカしく騒がしく下品極まりなく描いてみせた。キレイな世界を作るキレイじゃない裏側。このイカれたコメディが意識的に神経逆撫でしたり居心地悪くしたりするのもその為。カネをバラ撒くように散らかっていて、赤は血の滲むような赤。数百の、幾多の人生が映画を歴史を推し進めてきた。めちゃくちゃ好き勝手やってるように見えて、案外要所要所の展開は分かりやすかった。正直、ずっと面白いわけじゃないのだけど、音楽の力も大いに借りて、ひたすら勢いで押し切るような心意気だけは感じた。
チャゼル✕ブラピ=映画愛。年齢の割に昔の映画への造詣が深い監督と、アメリカン・ニューシネマに育てられ、映画を愛し映画に愛された我らが誇る稀代の大スター。彼ら両人を繋ぐのは紛れもなく映画愛それだ!! トビー・マグワイアは製作にも名を連ね、近年役者としての活動が減っている彼らが揃って出演もしているという貴重な本作。…とは言いつつ、トビー・マグワイアが出てきた辺りくらいから個人的に猛烈に飽きてしまってアイス食べたくなったけど、あの落とし所はズルいよ。いや、"あれ"ありきというか、"あれ"がしたいがためのこの当時の大作顔負けの長尺ランニングタイムとも言えるほどなのだけど。映画の夢に生き、現実に破れ、それでもなお映画を愛さずにはいられない者たちへ。光と影は表裏一体、酸いも甘いも知って少年は大人になる。
マリリン・モンロー?『マイ・フェア・レディ』?…等々、見ているときに色々な作品が頭をよぎった。視点人物は映画に憧れ夢見るメキシコ人マニーなのだけど、ノリノリなマーゴット・ロビーとブラッド・ピットが引っ張る。彼は役者として最終局面に入っている的なことを言っているけど、やっぱり役者として銀幕で動くブラピを見られることは一映画ファンとして大きな喜びなのだ!『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』ではスターを支える側だった彼が、今回はスター。ヒゲは『イングロリアス・バスターズ』を少し思い出した。
そこに黒人キャラも含めて主要人物4人のシーンがトントンと、時に怒涛の勢いであれこれ変わっていくさまは、クロスカッティングでサスペンス効果を高めていくところなど、例えば個人的にポール・トーマス・アンダーソン初期の群像劇もチラついた。カメラは違った方を向いている。スターは生まれつきスターで、映画屋はギャングみたいなもの。その中にも女性監督の存在や同性愛の側面は、実際にそうしたモデルがいるのかもしれないけど、現代的だなと思った。サマラ・ウィーヴィングやオリビア・ワイルドの使い方、豪華。
象のクソからの嘔吐ロングリバーーース。傑作『ラ・ラ・ランド』の冒頭でも発揮した流石の長回しは鼻につくけど、やっぱりスゴい。例えば『甘い人生』や『ゲームの規則』など金持ち達の馬鹿げたパーティーや行き交う人々。今回もジャスティン・ハーウィッツによる素晴らしい音楽を味方につけてシーンを印象付け、作品を形作る。重要なパートを担う。例えば『雨に唄えば』や『アーティスト』などトーキーへの変遷・移行期。虚飾と贅沢、そして時の流れに抗えず落ちぶれていく"盛者必衰の理"という避けられない宿命(さだめ)。"歴史は繰り返す"と言えど、ここはやはり大きな大きな転換期。けど本作はそこで留まることなく映画愛全部乗せ大爆発!! ちっとも綺麗事じゃないイカれた時代を清濁併せ呑んで駆け抜ける高カロリー叙事詩の着地点はピュアでもあった。一つの時代の終わり、そしてまた始まり。そうやって続いていく。
勝手に関連作品『雨に唄えば』『アーティスト』『ラ・ラ・ランド』『ブギーナイツ』『カツベン』『ブロンド』『華麗なるギャツビー』「全裸監督」