「映画の狂気を撮る狂気」バビロン 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
映画の狂気を撮る狂気
2022年。デイミアン・チャゼル監督。1920年代のハリウッド。超大物俳優と新人女優と新人スタッフの3人を中心に、サイレント映画最盛期の狂気の世界、トーキーへの転換と人間関係の変化、求めても求められないものと映画の真実、を大胆に描く。
3時間を超える大作のなかで、映画史への大胆な言及が盛りだくさん。サイレント期の撮影現場の喧噪もトーキー初期の現場の無音状態も「狂気」として描くのが監督の真骨頂。まともな人は映画に関われないし、「何か大きなもの」の一部になることなどできないのだ。大騒ぎのシーンがあるかと思えば、人物たちが感慨をもらす静かなシーンもあって、それこそ監督自身が狂気を実践しているので、観る者はいいように翻弄されてしまう。カットでつなぐことができない監督なのだが、ここまで真摯に映画についての狂気を演じてもらえればそれはそれで満足してしまう。
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