「綺麗事を掲げて他者を理解してるつもりになっているだけかも…と。」正欲 もいさんの映画レビュー(感想・評価)
綺麗事を掲げて他者を理解してるつもりになっているだけかも…と。
周りには打ち明けられない、性や欲に関する秘密を抱えた人たち4人が登場する。(最後の方の小児性愛者を含めると5人。)この映画は果たして、多様性に関する問題提起をしているのか、はたまた別の何かを伝えたいのか、考えてしまった。
吾郎ちゃん演じる検事の寺井や、諸橋が所属するダンスサークルの仲間高見は一見「普通の人」として描かれているのかと思いきや、そうでもない。多様性を認めたり発信しようとするものの、その正しさはどこか独りよがりでバイアスがかかっているものだった。
私たちもそうではないだろうか?
ダイバーシティを快く受け入れているつもりが、この4人のようにいざ自分とは異なる考え・感じ方の人が目の前に現れたらどう接するだろうか。あるいは関わらないように遠ざかるだろうか。人は誰しもが何かしらのマイノリティで、何かしらの変なところは持っていると思うのになぁ。自分なりの正しさフィルターを外すことは結構難しい。
個人的に八重子の特徴に共感するところはあって。「性欲とか恋愛とか結婚とか、全部関わらずに生きていけるならそうしたい」って、そう思う時、ある。でも人との関わりは求めてしまうんだよなぁ。
正欲を見終わった後、そばかすという映画を見たのだが、そこでも同じ感情を抱いた。でも、そういう考えって変なのかな?
夏月は言った。「私は地球に留学している気分。私にとっての辛いことが、他の人にとっては楽しいことなんだ」って。他の人が楽しめることを、何で自分は楽しめないんだろうって、そう思うことたくさんあるよね。それが恋愛とか結婚の話になると、どうしてちょっとおかしいって思われる?(自分でも思っちゃうし。)多様性を認めてほしいわけじゃなくて、色んな考えがあってそれを発すること(というかその感情そのもの)が許される世の中になってほしいと思った。あっちゃいけない感情なんてないからね。
夏月と佳道が見に行った水の放水シーン。落ちてゆく水と反比例するように高揚していく心が描かれていて見事だったなぁ。
あと、新垣さんのお芝居が素晴らしかった。お寿司を食べるシーン、食べ物の噛み方ひとつでその人の内面が滲み出てるなぁと思って感心しました。