「「理解する側だって思うなよ」」正欲 sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
「理解する側だって思うなよ」
っていうセリフが刺さった。
あぁそっか、「理解する」って思ってる時点で、自分はマジョリティの立ち位置なんだな…。
正直、自分は「明日、死にたくない方の人間」なので、苦しんでる佐々木や桐生や諸橋には「思いつめすぎなんじゃないのかな…」と言いたくなるのだが、そんな自分の中にも「無事に死ぬために生きている」とか「(自分の中の)正直な部分が終わってる」と思う部分はある。
それがあっても、今こうやって生きていられる(しかもマジョリティの立ち位置のつもりになって…)のは、「自分をわかってくれている人がいる」って思えているからだろう。
そういう点で、劇中の彼ら彼女らそれぞれに、わかってくれる存在ができていく展開に救われる思いだった。
対比的に、世の中的には、結婚もし、子どもにも恵まれ、出世もしている寺井は、我が子に対して四角四面な対応しかできないことによって、関係が崩壊していく。
彼が、自分の考える明確な正しさをもとに「知らないと思うが」と前置きしてまで正論で断じてしまうのは、検事という職業柄ゆえか、それともエリートとしての成功体験がベースなのか。
彼の言動を通して、世の中の「普通」や「当たり前」や「正しさ」の曖昧さや危うさが、ズバズバと投げかけられてきた。
それ以外にも、劇中では、人を傷つける呪いの言葉が至る所で出てくる。しかも、一見、それらは呪いの言葉らしく見えないところがタチが悪い。
とにかく「ありえない」と平気で言えるような奴にならないように生きたいと思った次第。
おもわず書き留めたいセリフも多く、役者たちの演技も素晴らしい。彼ら彼女らの表情だけで、深い思いが伝わってくる。
全体として、とてもいい映画だった。
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