「歓喜でも恐怖でも悲哀でもない感情でぐちゃぐちゃになりました。」正欲 らんでぶ〜さんの映画レビュー(感想・評価)
歓喜でも恐怖でも悲哀でもない感情でぐちゃぐちゃになりました。
小説は読まずに映画から観ました。
思った以上にヘビーだった…
テーマが重かった。
フェチを持った人の生きづらさとか息苦しさが絶妙に表現されていた。
あと、人と分かり合えないことで感じる孤独とか諦めがところどころ伝わってきた。
キャストはこの上なくよかったと思う。
演技下手な人が居ない。
それぞれに見入るポイントがあった。
まず新垣結衣。
いつもみたいな笑顔でキラキラしているガッキーはどこにもおらず、目が死んで、人生に諦めてるガッキーしかいなかった…
こんなの初めて。
言葉は少ないけど、喋り方とか態度に「あぁ、この人世の中生きづらい人だ」感が現れてて、改めて演技上手いんだなぁ…って思った。
そして1番気になってた欲情するシーン。
ガッキーに乱れて欲しくない!って願望もありながら見たけど、絶妙に演出と相まって上手い具合に表現されていた!
開始10分くらいでそのシーンはやってきます
是非見て。
あと、ハマり役はゴロちゃん。
堅物でわからず屋で冷たい印象だけど、決して悪い人じゃない感じがピッタリだった。
これが西島秀俊だったら少し優しすぎる。
いいかんじに冷たい印象を出せるのはゴロちゃんしかいなかったと思う。
そして、奥さん役の俳優さん。
よく見るけど名前わかんないあの人!
あの人、いい味出してるんだよなぁ。
その他磯村勇斗も実力派だし、男性恐怖症のあの子も初めて見る女優さんだけど、すごい迫力ある演技だった。
マッチョ大学生も、目線がまっすぐで多くを語らず…とてもよかった。
ストーリーはというと、最初はそれぞれの人物の日常が代わる代わる描かれていて、正直頭?のままで進む。
そしてある出来事で全員が結びつくんだけど、想像できる最悪のケースで結びついた…。
ほんと考えうる1番最悪なケースで…。
まぁ、ゴロちゃんが検事な時点でお察しなんだけど、フェチを感じることがいけない事ではないのに、性犯罪(窃盗なども犯罪もしかり)と陸続きであることが多い部分も否めず、まずここで葛藤。
磯村勇斗が連れていかれて置いてけぼりのガッキーの演技、すごいよかった。
言葉は何もないけど、胸にくるものがあった。
絶望もあると思うけど、いつか来る未来でもあったような…という風に私は感じた。
物語は最後、ガッキーとイナガッキー(上手いこと言った)のやり取りで終わるが、
ほぼこの2人の会話のみなのに、すごい迫力があった。
そして恐らくこの物語のテーマである"繋がり"を短いやり取りで表現してたと思う。
私が思うに、この映画は「いろんなフェチの人がいます」「フェチを持った人(マイノリティ)はこう感じています」ではなくて、その人たちが感じる寂しさや孤独、生きづらさを経ても繋がり合えるってことじゃないかと思いました。
そして、その事をマイノリティでも繋がりあえる人がいるガッキーと、普通を望み家族と繋がりあえなかったゴロちゃんの対比で表現されていたなぁと思った。
最後のガッキーの発言1つ1つが、ゴロちゃんへのボディブローのよう。
それと同時に、観てる私たちにも普通って?正しいって?と問いかけられているようだった。
正欲は文字通り「正しく(普通で)いたい欲」でもあったのかな…と。
なんかもう最後は何が正しいのか?
何が普通なのか?わからなくなり、ENDというかんじでした。
ラストのガッキーのセリフもとてもよかった。
映画館で初めて、歓喜でも恐怖でも悲哀でもない感情でぐちゃぐちゃになりました。
この映画で唯一の笑えるポイントは
途中大学の学園祭の踊るシーンくらいでしょうか。
(作った人には申し訳ないけど)マイノリティに向けた歌詞とか曲調がダサくて、わざとかな?と思ってしまいました。
普通の人が普通に楽しい学園祭や結婚式が、ああいう切り取られ方をするととても滑稽に見えました。
それも演出なのかな?と。
原作を読んでいないので、やはり原作とは違う点、違う切り取り方、違う解釈はあるのだと思いましたが、映画としてはすごく見応えがあったので、私の中では★5です。
共感ありがとうございます。
徳永えりさん、珍しくイヤな役でしたね。お腹の子を盾にする感じが、男性としてはムリですね・・でも新垣さんも適当にあしらっとけばいいのに、余裕無かったんでしょう。
トミーさん
コメントありがとうございます!
すごい、分かります(笑)
そしてああいう意識高い大学生いますよね。
ガッキーと一緒に働いていた妊婦にも、イライラ止まりませんでした。