「泉下のあの方にも見せたい作品」正欲 町谷東光さんの映画レビュー(感想・評価)
泉下のあの方にも見せたい作品
本当は★5つをつけたいが、半分欠ける理由は最後に。
毎度の映画鑑賞の習いどおり、ほとんど事前知識を得ずに映画館へ。本当は、スコセッシ監督、ディカプリオ主演の「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」を見たかったが、微妙に時間が合わなかったので、当日封切りの本作を見た。
その日の産経新聞の映画評で取り上げていたので、ちょっと気になったのも見に行った理由。
冒頭、女がひとりで回転寿司を食べる。美人なんだろうが、髪の毛がベタッとしていて疲れている風。確かガッキー(新垣結衣)が出演しているはず。似ているけど、彼女こんな感じじゃないだろう…と違和感。ガッキーといえば、やはり「逃げ恥」ほか、明るい美人、時に清楚…高身長、モデル体型。憂いがありながらもキラキラ感もというイメージ。
疲れてひとり回転寿司はないだろう。
しかし、だんだん話が進むと、この女がガッキー以外の誰でもないことが分かる。
そして、昔の映画記事の表現を使えば、なかなかの体当たりの演技だ。
あらすじなどは他に譲るが、出演俳優の名前と顔が一致するのはガッキー以外では、ゴローちゃん、稲垣吾郎だけ。
僕にとっては、無名に近い俳優がそれぞれ存在感を発揮し、この映画のテーマであるらしい「多様性」を掘り下げていく。
テーマと、俳優の熱演、サスペンスの味付けも効いた脚本と演出があいまってなかなか出来のよい作品。
描かれてい場面に、男子小児性愛に触れた部分がある。これについては、ネタバレになるせいもあるためか、ほとんどの媒体が触れていない。
そんなことは一切知らずに見て、本当にびっくりした。
元ジャニーズタレントの稲垣が、その事件を調べる立場にいる!
かなり「それ」についての描写も生々しく、映画宣伝的にはグッドタイミングのはず。
泉下のジャニーさんは、どう受け取るかが気になってしまった。
ネットで調べると、その点については、夕刊フジのサイト「zakzak」が既に10月に指摘していた。10日に発行された新聞各紙(一般紙)の映画評でもかなり褒められた作品だが、その点(男子小児性愛)にストレートに触れた評はなく、なんとも腰抜けぶり!!
先週、やはり封切り当日に見たゴジラに続いて満点をつけたい、と思うのだが。
見終わって買ったパンフレット(1000円税込み)がいただけない。
売り場のスタッフに「こんなにペラペラで1000円かい?」と訴えたら、「ですよね、せいぜい880円です」と言っていた。
それで、マイナス★半分ですよ。
でも、映画は必見の1本。
高いクオリティを持ち、まったく違うテーストの秀作、ゴジラと「正欲」が同時期に公開されるなんて日本映画、捨てたもんじゃない。
本来は地味な映画で客も来そうにない印象だが、先のスタッフによれば、「ゴローちゃん目当てで結構入りはいい」とのこと。
東京・城東地区のシネコンで鑑賞したが、平日昼下がり、入りはパラパラで男性が多かった印象。今後に期待。