「人間のエゴと醜悪さを徹底的に突きつけられる傑作!!」福田村事件 Jettさんの映画レビュー(感想・評価)
人間のエゴと醜悪さを徹底的に突きつけられる傑作!!
人間の恐ろしさと醜さをこれでもかというほど徹底的にえぐりまくった森達也監督の演出に圧倒され、終始 全身に力が入りっぱなし
良い意味で物凄く疲れましたが、ドキュメンタリー作家出身の森監督らしく、ストーリー・映像共に重厚感があり、とても見応えのある一級の作品に仕上がっています
ストーリーは差別を受け世の中の底辺で生きる香川の部落民が、彼らがさらに底辺として見下す朝鮮人の疑いをかけられ虐殺される
そんな彼らを殺したのは「朝鮮人が攻めてくる」という”ただの噂”に怯え、戒厳令に近い状況下で村を守ろうと一致団結した村人たち、という何とも皮肉で救いようのない最悪の結果となった実話をベースにした骨太の社会派ドラマ
とにかく本作では以下に羅列する、人間のエゴと醜悪さ、噂だけで簡単に間違った方向へ突き進む人々の迎合主義、一旦転がり出すと止められなくなる群集心理、といった人の不完全さ・弱点を容赦なく突きつけられ、終始 緊張感漂う不穏な空気に心身共に硬直状態に陥ります
・効きもしない物を良薬と言って人々に騙し売りする部落民が営む行商
・ゴシップや噂好きで、悪しき常識に乗せられ”朝鮮人”や”部落民”を見下す民衆
・東京に行っている夫が朝鮮人に殺されたかもしれないという噂だけで平気で朝鮮人の疑いをかけられた他人を殺せる若い女性
・徴兵された夫の留守中に義父や義弟とデキてしまう若妻達
・夫とのセックスレスの不満を他の男で満たす女性
・真実を解っていながら圧力に屈し、事実を隠蔽、歪曲するメディア
そんな骨太な作品、100年前の日本を背景にした映像が見事でしたが、それ以上にキャスティングが良かったです
最も存在感があったのは田中麗奈さん、毅然とし、他人には出自にとらわれず慈悲深いながらも、自分は夫との関係性に苦悩する、精神的に複雑で難しい静子役を艷やかに力強く演じており見事でした
部落民の行商リーダーを演じる永山瑛太さんも久しぶりに熱く激しい永山さんでした
昨今あやしかったり印象の薄い役が多かったですが本作はとても良かったです
豊原功補さん、群集心理を抑え込めず苦悩する村長がとても合ってました
最後に東出昌大さん、彼もまた出来のいい兄弟と比べられて辛い思いで生きてきたんだろうなと想像させる役を、ワイルドな風貌で男気を全面に出して好演しており良かったです
と、演出、ストーリー、キャスティングの全てがバランスよく完璧に混じり合った必見の名作です
共感ありがとうございます。
田中麗奈さんの新しい魅力を発見出来た作品でした。妙に強気で明るく振る舞っているけど、内面は・・ちょっとコメディ成分入ってるのも得難い人材です。