福田村事件

劇場公開日:

福田村事件

解説

「A」「A2」「i 新聞記者ドキュメント」など、数々の社会派ドキュメンタリー作品を手がけてきた森達也が自身初の劇映画作品として、関東大震災直後の混乱の中で実際に起こった虐殺事件・福田村事件を題材にメガホンを取ったドラマ。

1923年、澤田智一は教師をしていた日本統治下の京城(現・ソウル)を離れ、妻の静子とともに故郷の千葉県福田村に帰ってくる。澤田は日本軍が朝鮮で犯した虐殺事件の目撃者であったが、静子にもその事実を隠していた。その年の9月1日、関東地方を大地震が襲う。多くの人びとが大混乱となり、流言飛語が飛び交う9月6日、香川から関東へやってきた沼部新助率いる行商団15名は次の地に向かうために利根川の渡し場に向かう。沼部と渡し守の小さな口論に端を発した行き違いにより、興奮した村民の集団心理に火がつき、後に歴史に葬られる大虐殺が起こってしまう。

澤田夫妻役を井浦新、田中麗奈が演じるほか、永山瑛太、東出昌大、柄本明らが顔をそろえる。

2023年製作/137分/PG12/日本
配給:太秦
劇場公開日:2023年9月1日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第47回 日本アカデミー賞(2024年)

ノミネート

最優秀作品賞  
最優秀監督賞 森達也
最優秀脚本賞 佐伯俊道 井上淳一 荒井晴彦
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(C)「福田村事件」プロジェクト 2023

映画レビュー

4.0不安に呑まれた人々

2023年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

関東大震災の折、朝鮮半島出身の人たちがデマによって殺されたというのは有名な話だが、殺されたのは朝鮮人だけではなかった。日本人の被差別者たちや思想家たちもまた殺されていたのだ。その事実を脚色を交えて丁寧に映像化したのが本作。疑心暗鬼に陥った人が何をするのか、その醜悪さが強烈に浮き彫りになっている。
前半は、福田村の人間関係の描写に割いている。不倫などで村八分にされかけている者が、虐殺にはむしろ加担しないという構図になっているのだが、群集心理の危うさはむしろアウトサイダーにならないと見えてこないもの。虐殺に加担した村人にもまともな感性の人はいただろう、しかし、群集心理に飲まれるとそういう人でも歯止めが利かないことがあるのだ。そういうものに巻き込まれないために大事なのは、ポジションだったりする。
虐殺は不安に駆られた村人が自分たちのコミュニティを守るために始めてしまう。虐殺は何かを守るために始まるということをこの映画はきちんと捉えている。あらゆる戦争がそうであるように、「守る」という「正義」を止めることは難しい。大正時代の物語だが、心根の部分では全く現代人にも変わらない部分がある。虐殺しないために、いかに不安にかられず生きるかを考えねばならない。
こうした歴史の暗部をきちんと見つめることは、社会として成熟するために必要なことだ。この企画を成立させたことは高く評価されるべきだ。

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杉本穂高

4.0心に苦い、観るべき良薬

2023年8月31日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

知的

100年前の関東大震災直後、集団心理が暴走して“朝鮮人狩り”が行われ、間違われた中国人や日本人も多数虐殺された。日本人にとっての歴史的汚点、不都合な史実はなかなかドラマ作品の題材にならない邦画界(興行上の理由もあるだろう)において、森達也監督初の劇映画「福田村事件」は貴重で、快挙でもある。

脚本に名を連ねる3人のうち荒井晴彦と井上淳一は若松プロダクション出身で、彼らもまた福田村事件の企画を温めていたところ、森監督が同じ題材の映画化を目指していると知り合流したという。集団が異物を排除する心理が暴力に向かう描写は若松孝二監督作品に通じ、新聞社編集長と記者のエピソードを通じて権力・大衆・ジャーナリズムの関係性を問う視点は森監督のドキュメンタリー作品を思わせもする。

尺として40分、全体の3分の1を占めるという虐殺シーンは凄惨を極める。これが実際に日本で起きたことだと思うと心が締めつけられるが、良薬は口に苦し。ネットとSNSで日々標的がバッシングされ炎上している現代も100年前と同じ集団心理がはたらいていることを思えば、この苦い鑑賞体験が社会の薬になるという希望を持ちたい。

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共感した! 119件)
高森 郁哉

2.5劇映画は嘘をつかない

2024年4月18日
iPhoneアプリから投稿

うーむ。。
こういう企画が通ったこと自体は朗報だし、単なる歴史のお話じゃなく、今だからこそ公開する意味があるってのもわかるんだけど、正直微妙。

まずキャスティングがありえないほど豪華。手頃な作品なら主役を張れるような面々がゴロゴロ。
ただ、当時としては教養があってリベラルな(現代の観客が感情移入できる)人はみんな現実ばなれした美男美女ばかり。
一方、近視眼的、短絡的な「普通の日本人」はリアルな日本人スタイル。宮崎アニメばりのルッキズム。モテまくりの東出くんはともかく、逆の方が効果的だと思うんだけどなぁ。。

本業の俳優じゃないコムアイは思いのほかよかったし、水道橋博士の熱演もよかったんだけど、あのキャラであんまり怖く感じられなかったのが残念。

実話とはいえ、あくまで劇映画として成立させるためには、得体の知れない空気に侵食されていく過程とか、ひょっとしたら自分も加担してしまうかも、というジワジワくる恐ろしさをもっと体感させないと意味ないのでは。
森達也の初監督作で、変なところはなかったけど、企画の荒井晴彦の意向に引っ張られたのか?ドキュメンタリー作品の方が緊張感あった。次に何が起こるか、この人が何を考えてるのか、ほぼ見たまんまで予想通りだもの。
そういう意味で脚本に難あり。

あんな男女のドロドロ、あそこまでボリュームなくても成り立つわけだし、それはそれで別の企画にできるはず。。柄本明のナゾの役得とか、中高年男性の願望強すぎない?

それより「福田村」の観客としては、事件に至る流れの描写に労力と呎を割いてほしかった。
音楽で惨劇を盛り上げようとするのも、いまいち上手くいってない印象。
せっかく国際的にも通用し得る企画なのに、肝心の部分が説教ってのは実にもったいない。お説ごもっともなんだけど、それ観客が脳内で思うやつだよね?

あと、どうせやるんならコムアイと東出くんのその後を見せてほしかった。てっきり2人が村を出るとこで終わるのかと思ったわ。

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ipxqi

3.5辛い

2024年4月16日
PCから投稿

悲しい

実話なんでしょうけど、辛いです。

村社会の問題を上手に描いています。

ただ、地震のシーンはもう少し派手さが欲しかった。
そこが足りないので、流言飛語に違和感を覚えた。

ただ、重いテーマと真剣に向かい合った良い映画と思います。

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seina
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