「打ちのめされた」福田村事件 ゆーさんの映画レビュー(感想・評価)
打ちのめされた
たまたまテレビで特集をみて興味をもちました。
このような事件があったことすら知らなかったです。
近くの映画館で上映していたことは幸いでした。
鑑賞後、こんなに打ちのめされた映画は今までにありませんでした。あの場にいたら、自分も少なくとも傍観者になっていたでしょう。いじめと同じで、止めようとすれば自分も虐められることが容易に想像できました。ましてやあの興奮状態。
鐘がなった時、村八分になるぞ、と若者が母親に言いましたが、ムラ社会の閉塞感が冒頭からよく描かれていました。葬式行列にあの人もこの人も並んでいて、壮行会にも全員集合。村の中での男女の濃厚な人間関係。誰もが清濁併せ持って描かれている(濁だけの人もいたかも?現代の田舎にもいる詮索好きなおばさん)ムラの閉塞感もあの群集心理にハッパをかけたように感じました。
清濁という意味では行商リーダーの方も同じで、らい病患者を下にみる一方でそれらの行いへの罪滅ぼしか僧にお布施をしたり、仲間の差別発言に怒ったりと多面的に描かれている。差別されるものもまた差別する。
上下をつけるのは人間の、というか動物の本質なのでしょうね…
被差別部落のことは教科書で学んだだけでよく知らないのですが、もっとちゃんと知らないといけないですね。死ぬまで幸せになれない、何のために生まれてきたんだ、というセリフが痛ましかったです。水平社宣言を読んでみよう。
日本人かもしれないぞと集団をなんとか止めようとした時の、朝鮮人なら殺してもいいのか、のセリフの重さ。
相反して、分団長の事後のセリフは一番不快でしたし、奥さんの夫を労るセリフも気味が悪かったです。
加害者の人達は実刑になりその後恩赦になったようですし、その後の人生をどんな気持ちでどう生きたのかが気になりました。