劇場公開日 2025年1月31日

「「ベルサイユのばら」って、なんだったんですか?」ベルサイユのばら はじめさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0「ベルサイユのばら」って、なんだったんですか?

2025年2月16日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

原作者である池田理代子さんが「原作に忠実に書いてくださった」と仰ってるので、それが圧倒的なアンサー、正解だという大前提ではありますが…
大絶賛してる観客にも、こう語った先生にすら、マジ???正気????と感じてしまうくらい、私が好きな漫画「ベルサイユのばら」では、まっっったく、ありませんでした。

ただ、これが評価される理由もわかります。
原作連載当時から、オスカル&アンドレは圧倒的人気を誇るキャラクターで、特にオスカルの存在は、男性社会バリバリな時代の抑圧された女性たちにとってはバイブルのようで、実際より美化された形で皆の脳内に残っている気がします。
そしてそのオスカル像は、今まさに声を挙げ、オスカルのように生きようと、夢物語ではなく現実の価値観として触れる女性たちにとっては「共感」の対象として、ビシバシ刺さるところがあるのでしょう。
もちろん、私自身、このオスカルがいなければベルサイユのばらのファンにはなっていないし、彼女が言うこと為すこと全てに惚れているくらい、好きです。
そして今作はひたすら、この主人公から見た世界を、主人公に一切汚れがないまま、描ききっていました。
"オスカルファン"という視点では、ストレスなく無菌状態のままラストを迎えられ、むしろ余計なものが削ぎ落とされた、清々しい内容だったと思います。

ですが、こんなにも素晴らしいオスカルというスターの偉業を描きながら、同時にそこにいる多種多様なポジションの人間を誰ひとり雑に扱わず、「敵/味方」「愚か者/賢人」という単純な対立構造に落とし込まず、ただひたすらその時代に生きた全てのポジションの人間に光を当てた功績こそ「ベルサイユのばら」ではなかったのでしょうか?
「フランス革命」でも、革命が起こった「パリ」でもなく、「ベルサイユ」という王族を象徴する単語がタイトルに入っているのは、そこが主題だからではないのですか?

今回の最大の問題点は、マリーアントワネットがただのバカに映っていることです。
そもそも、池田理代子先生がオスカルより先にマリーアントワネットを描きたいと、同名の小説に感化され、この漫画に着手したというのは有名な話だと思います。
「悪女」と片付けられている女性を、ひとりの人間として描きたい、と。
その1歩目の目標は、もうどうでもいいのでしょうか?
オスカルやアンドレの人気が出たから?
そちらの方が現代の価値観にフィットし、評価されやすいから?
疑問が多くて申し訳ありません。
正直今回のアントワネットから受けた印象は、従来の「浪費癖のバカ王妃」というもので、ラスト近くのオスカルとアントワネットの対峙シーンにおいても、圧倒的にオスカルが正義VSアントワネットは敵、と、なんの情緒もなく気持ち良く決別していきます。
マリーアントワネットは、オスカルを輝かしく描くために使われただけの駒だと感じました。
キャラクターをそうやって浪費しない、都合の良い使い方をしない、その人権感覚こそが、好きだったのに…。

ただ、ラストの革命戦闘シーンはとても良かったです。
ここまで細かく壮大な描写をするのは漫画では難しいし、「オスカルが居たからこそバスティーユは墜ちたんだ」という、この物語の中での事実を実感できました。
その事実は、彼女の大きな決断に確かに意味があったと感じられるものでしたし、原作以上にオスカルの人生や存在そのものの価値を上げる要素になっていたと思います。
これこそ二次創作であり、そして映画でしかできないことで、見応えがあったなと感じています。
「原作に無いこと」を書かないことや、「原作にあること」をそのまま描くことだけが、必ずしも「原作の精神性を保つ」ことではないと思います。
その良い例としてこの場面は大好きです。
にしても、その後勝って結ばれてハッピーエンドで、アントワネット処刑すら肯定的に描かれるENDでは、盛り上がった気持ちも萎えます。
私は「ベルサイユのばら」に限らず、この時代や、革命の精神が好きで、もちろん市民寄りの目線で好きだからこそ、そちらの苦しみを完璧に描きつつ、「あちら側の真実」も同時に描かれた今作を読んで、衝撃を受けたのです。
こんなにも思慮深い"人間社会"の見方があるのかと、驚かされたんです。
そしてその見方で、この社会を見つめてきましたし、それは自分の人生にとってとても良かったことだと思います。
でも、そんなことより「オスアンの素晴らしさ」こそが、原作の要だったのですね…。

あと、歌が全て本当にダサい。。
歌を入れること自体は全然良いんだけど、急に現代的なポップスで、英語をたくさん入れ(あの頃のフランスなのに)、男性俳優たちに喋り声と全く違う高音で歌われても、キツい…。
安いMVのような歌がなければ、せめてアントワネットの晩年は入れられたのでは、、?と思ってしまうし。
唯一、仮面舞踏会や衛兵隊など、大勢での歌は妙に音楽性がマッチしていて、そういう曲もあるだけに逆にアベコベな感じ…。

宝塚歌劇のものも見ましたが、あちらはのったり退屈ながら、原作や時代の雰囲気を損なわない音楽で、原作の(私が好きな部分の)心も全く失わず、全然マシだったなと思います。
のったり退屈じゃなく、精神性もここまで失わない、3時間くらいのまとまった作品を見ることはできないのでしょうか…舞台でも映画でもいいので……本当に見たい…😢

はじめ
イブさんのコメント
2025年2月16日

すごく共感します。ベルバラのファンこそ傷つく映画でした。

イブ