劇場公開日 2022年11月11日

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「もう一人の主役、コッホ大尉」ペルシャン・レッスン 戦場の教室 よしさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0もう一人の主役、コッホ大尉

2023年12月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ナチスの虐殺から逃れる為に自らをペルシャ人と偽り、知りもしないペルシャ語の個人授業に励む主人公の苦悩を描く物語。

独創的で興味深い作品でした。
他のナチス物と比較して、収容所の描写が少し独特。残虐なシーンは勿論あるのですが、ドイツ人兵士達の生活や人間模様をしっかりと描いているのは興味深く感じました。

主人公の苦悩の描写も秀逸です。中盤迄は生き残る為にペルシャ人を、ペルシャ語をどうやって偽装するかを四苦八苦。後半は、虐殺される運命の同胞たちに対して、自らの待遇に対する自己嫌悪に悩む主人公を活写します。

この作品は、ペルシャ語の生徒役になるコッホ大尉をどのように描くか・・・が鍵だったように思います。不幸な生い立ち。意気軒高で威勢の良いナチスになんとなく入党し、そして大尉に迄昇進。ナチスを嫌悪した兄との別離を悔やみ、平和の詩を紡ぎ、人を殺していない・・・と叫ぶコッホ。
彼と主人公の友情を描くのか、或はあくまでナチス将校として憎悪の対象として描くのか・・・それが中途半端になってしまったように思います。
どちらかに寄せてもらえたら、よりカタルシスを得られたかもしれませんし、或は、よりを儚さを得られたかもしれません。
どちらにも寄せられなかったラストは、ある意味リアルではあるのでしょうが、映画としては少し損をしたように感じられました。

私的評価は4にしました。

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よし