「前半は自分に負荷をかけながら必死に頭をフル回転させるスリリングな「...」ペルシャン・レッスン 戦場の教室 ゆきさんの映画レビュー(感想・評価)
前半は自分に負荷をかけながら必死に頭をフル回転させるスリリングな「...
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前半は自分に負荷をかけながら必死に頭をフル回転させるスリリングな「1人なんじゃもんじゃゲーム」。大尉がカード切るたびに、自分王国の言語を捻り出し、目の前の相手を信じさせる為、孤高の闘いを繰り広げる。少しのミスも許されない、the・記憶力ゲーム。
初めは自分が生き続けることだけを考え行動していた主人公だったが、収容所で過ごす中で、ユダヤ人が執拗に虐げられたり、情が芽生えた仲間が無残な形で死を遂げたりする姿を目の当たりにし、次第に自分だけ嘘で生かされ続けていることへの罪悪感を覚え、自ら死を選ぼうとする。
だが終盤、生き残るために撒いてきた種に、思いがけない形で救われることになる。
そして、全てが線になるラストの仕掛け。このような形で話が繋がるとは。変な言い方だが、名簿の妙。
歴史の証人として個々の名を名指すことの意義は、アルモドバルのパラレルマザーズのラストや、ジャネイルモネイのHell You Talmboutにも通ずるものを感じた。まるで、お前にはまだ重要な責務が残っていると言わんばかりに脚本に生かされ続けたようにも思える。
思いがけない地平に辿り着いた今、この物語の証人になれたことを貴重に思う、豊かな鑑賞体験であった。
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