「【”2840人の、ナチスの犠牲になったユダヤの民の名前。”驚異的な発想力と記憶力により、自らの負の運命をこじ開けた男の物語。ハラハラしながらも、ラストシーンは、可なり琴線に響く作品である。】」ペルシャン・レッスン 戦場の教室 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”2840人の、ナチスの犠牲になったユダヤの民の名前。”驚異的な発想力と記憶力により、自らの負の運命をこじ開けた男の物語。ハラハラしながらも、ラストシーンは、可なり琴線に響く作品である。】
ー 実話に基づいた物語である、と冒頭テロップが流れる。-
◆感想
・ユダヤ人である、ジルが収容所で生き延びるために必死になって、収容所の元料理長のクラウス・コッホ大尉の、”終戦後は、テヘランでレストランを開きたい。”と言う願いの元、ペルシャ人と偽ってコッホ大尉に偽のペルシャ語の単語を教えていく過程が、ハラハラしながらも魅入られる。
・収容所には、ジルの事をユダヤ人と見抜いて、執拗に彼を追い詰めるマックス兵長がいるが、コッホ大尉の計らいで、料理係になったジルは必死に、収容所のユダヤ人達にスープを配る際に、一人一人の名前を聞き、”疲労””希望”と言った単語と名前の一部を結び付けて行く。
・新しく入所させられた囚人の中に、ペルシャ人が居る事を知ったマックス兵長の嬉しそうな表情。そして、調理室を訪れ、ジルを収容所の棟に連れて行くシーン。
ー 物凄く、ハラハラしたシーンである。だが、そのペルシャ人は障害がある弟と自分に、ジルがコッホ大尉から貰った肉の缶詰を貰った男により、首をナイフで切り裂かれていた・・。-
・そして、ナチス・ドイツが連合軍に追い込まれ、収容所も閉鎖されるシーン。所長は、ユダヤ人を総て始末しろ!と命令するが、何故かコッホ大尉はジルを連れて、収容所を後にし、途中で”新しい人生を・・。”と言って別れる。
ー このシーンは、元々ナチスの行為に嫌気が差していたコッホ大尉が、ジルが”ユダヤ人の命は、貴方たちよりも尊い”と勇気を持って言い放った事やキチンと捕虜名簿を綺麗な文字で書く姿勢など、彼の言動に親近感を覚え、”クラウスと呼んでくれ”と言った事が背景にあると、私は思った。-
・コッホ大尉がパスポートを偽装してテヘランへ脱出しようとするもジルに教わった偽のペルシャ語が通じずに取り押さえられるシーンは、実にシニカルである。
<ラストシーン、ジルがユダヤ人を保護したテントで、”収容所に居た人物の名前を一人でも良いから言ってくれ・・。”と問われた際に、彼の命を助けた暗記していた、ユダヤの民の名前を次々に口にするシーン。
その数の多さに驚く、多くのスタッフやユダヤ人たちの表情。
可なり琴線に響いたシーンである。
現況下、反戦映画の逸品が又一作、この世に出た事に深い意義を感じた作品である。>