「それでも、それでも、進んでく」少女は卒業しない ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
それでも、それでも、進んでく
原作は未読ですが、今作が公開決定した時からかなり期待していました。河合優実さん初主演というのも一ファンとして嬉しいばかりです。
4人の女子高生のそれぞれの恋や葛藤にまつわるオムニバス的な作品で、美しくもほろ苦い青春譚に仕上がっていました。
恋人との不意な別れ、先生への憧れ、彼氏との小さな葛藤…どれも体験したことはありませんが、青春だなぁと感じるシーンがたくさんありました。教室にこっそり入って食べる給食、先生との秘密の放課後、地元を離れるか否かでの喧嘩、軽音部の笑い物がその殻を破る瞬間、どれも成長へと繋がっていくのが上手い演出だなと思いました。
河合優実さん演じる山城まなみは超真面目な優等生、卒業式の答辞もやるという立派な生徒、彼氏との普段も楽しそうですし、とても順風満帆だなと思っていましたが、途中で暗雲が。彼氏が落下なのか自殺なのか…死んでしまい、まなみは深い傷を負ってしまいます。途中で作田さんが「山城さんも頑張ってるんだから、私も頑張らなきゃ」というセリフはここに繋がっていたなと感心しました。国連にするための弁当に刺す国旗もまだまだ足りず、幸せそうな2人を襲う悲劇には胸が痛みました。
小野莉奈さん演じる後藤由貴は彼氏と少し揉め事。地元に残る選択をした彼氏と、東京で心理学を学びたい由貴、これだけなら仕方ないで済むけれど、学校の取り壊し跡地の意見で揉めてしまい、その後もちょっとギスギス。話し合いをしようにもうまく言葉がまとまらず。何度「寺田ぁ!」と喝を入れたくなったことか笑
でも卒業式後、屋上で無事に和解、そこで花火を2人でする、あぁなんて青春なんだろうと何故かウルッときてしまいました。
中井友望さん演じる作田詩織は図書室にいる先生に憧れるぼっちちゃん。1人が好きというか仲間の輪に入るのが苦手で、図書室での先生との会話を楽しむ子。そんな子が一歩踏み出すためにクラスメイトと話したりするも、どうにも上手くいかず。それでも卒業式の日、気にかけてくれてた子やその友達から卒業アルバムにメッセージがたくさん書き込まれており、満面の笑顔が映って、こちらも幸せを感じる一幕になっていました。
個人的にクリーンヒットだったのは神田杏子を演じた小宮山莉緒さん。今作で初めて拝見しましたが、17歳!?映画初出演!?とは思えないくらいの安定感と存在感を放っていて心を奪われました。学生時代に彼女みたいな人がいたら絶対に惚れていました。さりげなくの行動一つ一つが優しいですし、2人乗りなんてまぁ///となってしまうほど魅力的なキャラクターでした。
高校の卒業式、もう何年も前になってだいぶ色褪せてきてはいますが、あの時しか体験できなかった事って沢山あったなとしみじみと思いました。学校帰りの買い食いにカラオケ、ちょっとだけ遠出したり、ささやかな恋をしたり、そんな思い出を全部総括してくれたのが卒業式で、何か無いかなと地味に最後の方まで学校に残っていた記憶があります。映画を通して思い出が蘇るってのも中々に乙だなぁと思いました。素敵な映画をどうもありがとうございます。
鑑賞日 2/28
鑑賞時間 20:40〜22:45
座席 F-12