「卒業アルバムのあのひとは・・・・」少女は卒業しない ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
卒業アルバムのあのひとは・・・・
卒業式の前日から始まり当日に終わる、
ごく短い期間の物語りは
邦画ではあまり描かれることのなかった題材との記憶。
海外には「プロム」との圧倒的なイベントがあり、
その分、扱い易いのだろう。
劇中でもふれられる〔キャリー (1976年)〕や、
結構好みの〔ウォールフラワー (2012年)〕。
とは言え本作を観れば、
どうしてなかなかドラマチックな展開を創れるものだな、との感慨。
実は自分は、高校の卒業式には出ていない。
大学受験のため上京し、
一ヶ月間、親戚の家にやっかいになっており
出席が叶わなかった。
今でこそ結果はWebでも確認できるし、
共通試験の結果を以っての受験も可能も、
往時はそんな便利なシステムにはなっておらず。
叔父叔母にそこまで迷惑を掛けるわけにも行かず、
大学生のアルバイトによる「合格電報」はあったものの、
信頼性には欠け、やはり自分の目で合否は確かめたいとの強い思い。
まぁ結果、全滅し、浪人となったのだが。
卒業証書とアルバムは重い気持ちを鼓舞しながら個人で高校に取りに行き、
担任からは「捲土重来」との有り難いお言葉を頂戴するオマケ付きで(笑)。
とは言え、その当時は、結構な人数が出席していなかった、とも漏れ聞く。
が、今回観たような、
わくわく
どきどき
もやもや
むふむふ
うるうる
のドラマが繰り広げられると知っていれば、
多少の無理をしてでも帰ったのにと、後悔しきり。
今となっては取り戻すことなどできはしないものの。
三年間、ほぼほぼ友達もできず
図書室で時間を過ごした『作田(中井友望)』。
自分は演奏はしないものの、
卒コンを仕切らねばならぬ『神田(小宮山莉渚)』。
式での答辞を読むことになった『山城(河合優実)』。
東京の大学への進学が決まったため、
地元に残る彼氏の『寺田』との仲が気まずくなってしまった『後藤(小野莉奈)』。
何れも男子の陰がチラつきながら、
四者四様の悲喜こもごもは、
実は三年間の集大成がぎゅっと濃縮された時間と言え。
自分達の学び舎が、今年を最後に取り壊され、
新しい校舎に移るとの設定も
エピソードを膨らませるスパイスとして上々に機能している。
技量的にはいまだしも、
後ろ髪を引かれつつ旅立とうとする少女たちを
四人の女優さんが瑞々しく好演。
葛藤と闘いながら、一段の成長を遂げる姿は
観ていて清々しい。