「卒業とは、新しい世界への旅立ちでもあります。この作品の女子高校生たちは皆輝いて見えました。きっと素敵な将来を引き寄せるのだろうと想い描いています。」少女は卒業しない もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
卒業とは、新しい世界への旅立ちでもあります。この作品の女子高校生たちは皆輝いて見えました。きっと素敵な将来を引き寄せるのだろうと想い描いています。
河合実優さん初主演作ということで
とても気になっていた作品。
原作の小説があるようですが未読です。。
さあ鑑賞。
廃校が決まった地方の高校が舞台。
4人の女子高校生を中心に描かれる群像劇です。
卒業に向けたそれぞれの想いが編み込まれたお話が
ラスト2日間の中で丁寧に描かれていきます。
原作はオムニバス形式との事。
その形式ではお話が1人分ずつ進むことになるので、
「Aさんのお話 ⇒ Bさんのお話 ⇒ Cさんの…」
という感じになるのですが、
この作品では4人分のストーリーが同時進行でした。
時系列が未来に向けて進むので
ストーリー全体は分かりやすい。 という反面、
お話の視点が4人の行動を行ったり来たりするので、
最初のうちは 「この子誰だっけ ?」
と、理解にやや苦労して観てました。
4人のキャラクターの識別がついて
それぞれの立場と 「想う相手」 が分かってからは
彼女らのセリフにも行動にも
ごく自然なものが感じられて共感しながら観てました。
オムニバス形式のままにせず、
1本のシナリオにまとめる事が映画にする上で必要 と
監督が判断し、それがこの作品では上手くいった
そんな風に感じました。
ストーリーの構成力が良いだけではなく
登場する4人の女子高校生の描写も、また秀逸。
4人ともとても魅力的で、とても良いです。
・山城まなみ(河合優実) 料理部の部長
交際中の彼氏あり。
お弁当を時々作ってあげているようだ。
調理室で一緒にお弁当(まなみが作っている)を食べる日々。
弁当箱に入れる 「国旗」 を調理室の棚に張り付けて
それが次第に増えていくのも楽しんでいる様子。
雰囲気が普通のカップルっぽい二人なのだが…。
・後藤由貴 (小野莉奈) バスケ部の部長
バスケ部の男子と交際中…なのだが
卒業後の進路のことでギクシャク中。
自分は東京に進学し、彼は地元の大学へ。 あら遠距離~
一緒に居たい人は地元にいる。 …しかし
将来のため学びたい事のためには、東京に行かなければ…
気持ちを伝えるきっかけも掴めずに悶々としている。
時間だけが過ぎていく事がもどかしい…。
・神田杏子 (小宮山莉渚) 軽音部の部長
卒業式後の会場でライブ演奏の予定。が控えている。
トリのバンドをどこにするかで揉めている。
校内の生徒からトリの投票を募ってみたら、なんと
「演奏は録音、歌も口パクの色モノバンド」 が1位。
実力派の2位のバンドからは猛反発を食らうが (…分かる)
1位バンドのヴォーカルに思い入れがあるようで…
・作田詩織 (中井友望) 図書室の子
3年間、友達が出来なかった。
落ち着く居場所は図書室。
そこは静かな空間で、落ち着く。 …それに
図書室には、坂口先生がいる。
「教室には居場所が無い」と想いを口にするのだが…
主役4人の友人達が、これまた生き生きと描かれていて
ここで高校生活を送ってきたという事が伝わってきました。
原作者そして監督の、登場人物へ向ける眼差しに
優しくさと暖かさを感じました。
卒業グラフィティとして秀逸な作品と想います。
観て良かった。
満足です。
◇あれこれ
■河合優実さん
主役を演じた河合優実さん。 好演です。
ラストの体育館でのシーンに心撃たれました。 うん
「彼」の止まった時間。 それを先に進め
そして 「自分」 も先に進むための
二人だけの卒業式 …でしたね。
彼(=夏の格好で寒そう)に着せた上着
最後にそれを抱きしめての慟哭は、
”先に進むね” との決意の現れなのでしょうか。
印象に残る、ラストシーンです。
■バスケ部の二人
12月に付き合い始めたらしい二人。
その時点で、互いの進路は既に決まっていたのでは?
という気もするのですが
交際開始後に 「私は東京に行くの」 と言われたら
それはモヤモヤするのは当然 …かと。
そこは「彼」に同情。 …うん
けれど、この二人。
4年後には、また付き合い始めるのでは …?
そんな予感がします。 …なんとなく
※ しかし「屋上で花火」はまずいっしょ
いくら廃校予定の校舎とはいえ… ねぇ
■図書館の少女
勇気を出して声をかけたのは大きな一歩。
無駄にならなくて良かった。
寄せ書きページには7名分のサイン。
「びっしり」ではないところがリアル感あり。
「魔法の本」ともども、大切にしよう。
※ 図書館の先生、いい先生でした。
この人はどうやって結婚相手見つけたのだろう なんて
そんな事が気になってたり…
◇最後に
メインヒロインは「山城まなみ」と思うのですが
影の主役は「神田杏子」かも と
そんな風に思えてなりません。
「まなみの彼」 が時折口ずさんでいた曲。
時折どこかから聞こえてくる… と言っていた曲は
誰がどこで歌っているのか それが分からないままでした…。
その曲を調理室で耳にした「まなみ」。
体育館まで確かめに行って、歌声の主が
「森崎剛士」 と知るワケなのですが…
彼がその曲を 「ソロで歌う流れ」
を作ったのも…良く考えると 「神田杏子」 だし
さらにさらに
衣装を隠しただけでなく、もしかしたら
投票1位になるように仕向けたのも実は…。
# 彼の歌が上手い事は自分だけが知っていたい けど
# 彼の歌声の素敵さををみんなに知ってほしい あああ
うーん。
複雑な乙女心の現れなのでしょうか。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。