「群像劇のセンスが良い」少女は卒業しない わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)
群像劇のセンスが良い
朝井リョウ原作でまたしても映画化成功と言える作品が出てきた。監督の前作を見ていたので、プロデューサーがこの監督を選んだセンスが光る。
経験の少ない若者ばかりを集めるとどうしても嘘くさく見えることがある教室シーンも違和感なく見ていられた。セリフ回しだけじゃなく、手癖や膝の曲げ方、姿勢など演出が行き届いているなと感心させられた。
4人の群像劇なんだけど、それぞれがまず面白いことが前提。全てを伏線回収のように集める作品もいいけど、この作品は安易に逃げず、4人に重なる部分と重ならない部分とを上手く提示している。4人を並行に描いているように見えるからこそ時系列操作にしばらく気付かなかったり。さすがにそれぞれのラストは交互に描かないほうが良かったかなーと思ったけど(図書室のシーンはストレートに見せたほうがもっと感動したと思う)。
河合優実の息遣い。答辞と言えば「ラストレターの広瀬すず」だったけど、また違った形での良い答辞だった(最初聴かせないのも憎くていい)。スローから手持ちカメラがスッと動き出す緩急と河合優実の熱演。何が彼をそうさせたのかは示さないのも良い余白。
贔屓の女優中井友望と藤原季節のやり取りも良かった。一番卒業したがっている中井友望が卒業までの2日で大きく成長した結果のラストシーン。大切なことはこの2人が多く言語化していた。
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