「熱く、楽しく、爽やかに沁みる!」劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
熱く、楽しく、爽やかに沁みる!
人気漫画を原作としたテレビアニメ「ハイキュー‼︎」の劇場版。原作未読ながらテレビアニメでその魅力に触れて、夢中になって観ていました。ただ、全シーズン視聴していたわけではないし、記憶も曖昧なので、本作を楽しめるか不安でしたが、全くの杞憂でした。
ストーリーは、春高バレーで3回戦に進出した烏野高校が、長年のライバル校であり、共に切磋琢磨してきた音駒高校と対戦することとなり、互いの校名にある「カラス」と「ネコ」にちなんで「ゴミ捨て場の決戦」と名付けられた白熱の試合を描くというもの。烏野対音駒の試合をメインストーリーとしながらも、音駒の弧爪研磨にスポットを当て、バレーを通じて出会ったかけがえのない仲間たち、そして彼らと過ごした時間がもたらした研磨の変容が、熱く鮮やかに描かれます。
冒頭で研磨と日向翔陽との出会いが回想されますが、すぐに試合会場へと舞台を移し、試合開始となります。本作が全エピソード中のどのあたりの話なのか知らずに鑑賞していましたが、描かれるのはこの一戦だけなので、前後のつながりは気にせず、この試合を楽しむことだけに身を委ねればいいと思います。そういう意味では、潔いほどテンポのいい立ち上がりです。しかも、会場の熱気や選手の気迫が伝わる臨場感で、あっという間に没入できます。
試合の魅せ方もすばらしく、バレーの知識がほとんどない自分でも、興奮に体が震え、感動に目が潤み、いつまでもこの試合を見守り続けたいと思えるほどでした。バレーがこれほどまでに頭脳戦、心理戦を繰り広げるスポーツだとは思いもしませんでした。そんなヒリつくような熱い攻防中にもかかわらず、仲間内や相手校とのやり取りの中で見せる毒舌やコメディ要素が、ある時は清涼剤のように場を和ませ、ある時はカンフル剤のように仲間を奮い立たせます。各キャラの個性を生かした、この絶妙な緩急のバランスが、本作の大きな魅力の一つとなっています。
ラスト直前は、研磨の一人称視点からの描写が秀逸です。臨場感、躍動感ともにハンパなく、さながら観客もコートに立っているかのような、さらに言えば研磨と同化し、感情を共有できたような不思議な感覚。何かに打ち込み、かけがえのない仲間に出会えて、共に成長して、それを実感する、だからまた頑張れる、こんな素敵なことはありません。そんな思いが、研磨を始めとする登場キャラの全員から、熱く、楽しく、爽やかに沁みてきます。
満ち足りた余韻に浸りながらエンドロールを眺めていると、まさかのポストクレジット。最後までしっかり楽しませてくれます。そして、まだ続きそうな予感。今後もますます楽しみです。
キャストは、村瀬歩さん、石川界人さん、梶裕貴さん、中村悠一さん、日野聡さん、入野自由さん、林勇さん、細谷佳正さんらお馴染みの面々。プロの演技に酔いしれます。
もちすけさん、共感&コメントありがとうございます。そちらにコメントできなかったので、こちらに返信いたします。
おっしゃる通り、本作を通して描きたいテーマをはっきりさせたことが、構成の潔さにつながったのだと思います。製作陣の心意気を感じます。