「地上600mの適者生存」FALL フォール bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
地上600mの適者生存
地上600mという鉄塔の上にクライミングし登頂した後、梯子が崩れて取り残された2人の女性が、命の限界の中で、繰り広げられるサバイバル・スリラー。高所恐怖症の自分にとっては、終始、ハラハラし通しの展開に、お尻がムズムズして落ち着かずに鑑賞。
この先、きっとこんな墜落の危機に見舞われるという状況は、十分に予想きるのに、そのシーンが訪れる度にドキッ、ビクッと身が縮む思いにさせる。地上600mという上空で、しかも登頂した2人が身を置くスペースは、直径1m程度の金網の上という極限のシチュエーションに、自分もその場に置かれている様な臨場感さえ伝わってくる。
夫がクライミング中の滑落事故で亡くなしたベッキーは、その後、その悲しみから立ち直れず、酒浸りの日々を送っていた、そんな娘を心配する父親が、娘のクライミング仲間の親友ハンターに、元気づけてくれるように依頼。そこで、廃墟となった地上600mの電波塔への登頂計画を立てる。しかしその鉄塔は、赤茶けた錆が浮き出て、ボルトも外れそうで、鉄塔に架けられた梯子伝いに登るという、あまりに無謀なもの。それでもハンターの意気込みに押され、ベッキーも夫の死と決別する為に、登頂を始めるのだが…。
本作の面白さは、究極の高所でのサバイバルにあるが、それだけではない。前半部にいくつかの布石が散りばめられていて、それが頂上で取り残された時に一つ一つ回収されていく。まずは、夫の死を経験してネガティブなベッキーに対して、あまりにハイテンションなハンターの存在が相対して、正直、ハンターの行動にウザさを感じた、しかし後半、ハンターの拠り所となっていたものが露になると、そのハイテンションの意味も理解できる。また、鉄塔に登る前に体験した、トラックとの衝突事故寸前の恐さ、野生動物の死骸をあさるハゲワシの群れ、スマホの充電器に、ライトのソケットを使って充電するサバイバル術等、が後半部で、鮮やかに回収されていく巧さを感じた。
そして、ラストでベッキーが鉄塔の上で生きる為に選んだ選択は、正に『適者生存』の動物本来の生きる術なのかもしれない。但し、救出シーンがあまりにあっけなく、「エッこれで終わり?」といった感想が正直なところ。
主役のベッキーには『シャザム』や『アナベル』にも出演していたグレイス・キャロライン・カリー、親友のハンターには、個人的にはお初の女優さんでバ—ジニア・ガードナーが務め、そしてベッキーの父親には『ウォーキング・デッド』で、悪役ニーガンを演じたジェフリー・ディーン・モーガンが演じている。
これ、映画館で観ました。あまりの怖さに、お尻ムズムズどころか、映画館から逃げ出したくなりました。
伏線回収見事で、ちょっと?の部分(てっぺんの電球、普段は誰が替えるの)はありますが、実によくできたサスペンスだったと思います。