「登場人物の全員を救って欲しかった」スクロール tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
登場人物の全員を救って欲しかった
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主要な登場人物は4人で、それぞれに焦点を当てた章によってストーリーが展開していくが、その中核を成すのは「僕」の物語である。
パワハラ上司によって人生に絶望し、死にたいと願っていた「僕」が、自分を理解してくれる女性である「私」と知り合い、前向きに生きられるようになる経緯には共感が持てるし、観ている側も救われたような気持ちになる。
特に、「社会が何をしてくれるのかではなく、社会に対して、誰かに対して、何ができるのかが大切だ」というメッセージには、深く胸に刺さるものがある。
また、何か嫌なことがあっても、スマホをスクロールするように気持ちを切り替えるという生き方も、現代における有効な処世術であるように思える。
その一方で、大学の同級生の「ユウスケ」は、最後まで「生きる意味」を見つけることができないし、その恋人の「菜穂」も、結婚願望を叶えられないままエンディングとなる。
できれば、こちらのカップルにも、人間的な成長やハッピーエンドを用意してもらいたかったし、そうでなければ、何のためにこの2人を登場させたのかが分からない。
現実に苦しむ若者たちの「救い」の物語であるならば、登場人物全員を救って欲しかったと思うのである。
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