「【前半は重く、キツイ映画だが、”辛い記憶はスクロールして生きる。自死は駄目だ!”と言う生の大切さを発信する作品である。古川琴音さん演じる強き”私”が印象的な作品でもある。】」スクロール NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【前半は重く、キツイ映画だが、”辛い記憶はスクロールして生きる。自死は駄目だ!”と言う生の大切さを発信する作品である。古川琴音さん演じる強き”私”が印象的な作品でもある。】
ー 章立てで物語は構成されている。
序盤は可なりアーティスティックな作りであるが、世界観は嫌いではない。-
◆感想
・パワハラ上司、コダマ(忍成修吾)の標的になった”僕”(北村匠海)は、辛い社会人生活を過ごす日々。
コダマに対しては”マジ、死んで欲しい”と内心思っているが、言えずに鬱屈しSNSでその言葉を呟く。
ー ”僕”が経験する辛い日々の描き方が、アーティスティックな風合があるのだが、やや分かりにくい。ビルの屋上から飛び降りるシーンなどは、虚実混交である。
だが、飛び降り自殺したアイドルが、誰もいないレストランで”僕”に供したカップ焼きそばや、戸棚から溢れ出した母からの未開封の封書などは、印象的である。-
・”僕”の呟きに、夜中”良いね”が付き、”僕”が居ない時に、コダマに対し、”コダマ、まじ、死んで欲しい。”と面と向かって言い放った”私”(古川琴音)の姿。で、サッサと会社を辞める。
ー 今作では、混迷する日々を送る4人の男女がメインキャラクターで登場するが、”私”だけが無理をしていない。そんな”私”に”僕”が惹かれるのは、必然であると思う。
更に言えば、パワハラで会社を辞めさせられたコダマの鬱屈した想いを発散させる行為は具の骨頂である。-
・”僕”の大学の友人であるユウスケ(中川大志)も、表面上は明るいキャラだが、中身が無い。多くの女性と同衾してきたようだが、名前も覚えていない。
自殺した“森”を始めとして・・。
ー ユウスケの中身の無さが露見する幾つかのシーン。
”私”の友人である菜穂(松岡茉優)とバーで知り合った頃、森の自殺を知る。
そして、自分のスマホに残されていた森のラストメッセージ。
それを聞いたユウスケは激しく動揺し、菜穂との結婚の約束を反故にして、”僕”と森の自死の真相を図ろうとする。
ハッキリ言って、ユウスケの不甲斐なさが、菜穂に刃を持たせた事は、間違いない。
”女性に対して礼を尽くさなかったユウスケは一度、もっと深く刃を身に受けるべき!”等と思ってしまったシーンである。-
・そして、二人は”社会が僕に何をやってくれたかでなく、僕が社会に何をしたのか”が大切だという事に徐々に気付いて行く。
特に、それまで笑顔無き”僕”が強き”私”の存在により、笑顔を取り戻していく姿が良い。
<今作のストーリー展開は粗いが、心に残る台詞が幾つかある。
”社会が僕に何をやってくれたかでなく、僕が社会に何をしたのか”が大切という台詞は特に秀逸である。
真面目な社会人であれば、仕事の95%はキツイと思うが(私だけであろうか?)残り5%で仕事の達成感を得られれば、上等ではないか、と思った作品。
そして、どんなにキツイ事が有っても、自死しては絶対にいけない!という、この作品が発するメッセージは、とても大切な事であると思った作品でもある。>