劇場公開日 2023年2月23日

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「【”お弁当を美味しそうに、綺麗に食べる人に悪い人はいない。”海辺の小さな町に暮らす心の片隅に孤独を抱えた人たちと、同じく心に孤独と闇を抱えつつ飄々と生きるちひろさんとの交流を優しい視点で描いた作品。】」ちひろさん NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”お弁当を美味しそうに、綺麗に食べる人に悪い人はいない。”海辺の小さな町に暮らす心の片隅に孤独を抱えた人たちと、同じく心に孤独と闇を抱えつつ飄々と生きるちひろさんとの交流を優しい視点で描いた作品。】

2023年3月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 今作ではちひろさん(有村架純)の過去は一切語られない。
  弟が母親の死を伝える電話の声だけである。だが、彼女は母親の葬儀に出ない。
  お弁当屋で働くちひろさんは、元・風俗嬢だという事も隠さずに飄々と生きている。
  そんなちひろさんに惹かれる様に、色んな人が彼女と関わるが、ドラスティックな出来事はほぼない。
  けれども、この作品には人の様々な形の優しさが詰まっている。
  故に、観ていて優しい気持ちになれるのである。-

■ちひろさんと関わる人達とちひろさんの遣り取りで印象的だった事。
<Caution!  内容に触れています。>

1.ホームレスのお爺さん(鈴木慶一)に、ちひろさんはお弁当を上げて、自宅にまで招いてお風呂に入れて上げるシーン。そして、お爺さんが居なくなった事に気付き町中を探し、お爺さんの死体を見つけ、土に埋めるシーン。
ー ちひろさんの人を見た目で判断しない優しさ溢れるシーンであり、ちひろの過去の出来事を勝手に推測させるシーンでもある。ー

2.キャバ嬢の母(佐久間結衣)が忙しくて、孤独感を覚えているヤンチャな小学生、まことがちひろさんを揶揄っている時に怪我をさせてしまった時に、謝るシーン。
ちひろさんは”謝る時には人の眼を見て謝るの!”と諭す。
ー ちひろさんが、キチンとした考えを持っている事が分かるシーン。-

3.まことの母がちひろさんに対し”お弁当とか上げないで!私が変に見られる。と怒鳴り込んできた時にはちひろさんは謝るが、まことが作った母の誕生日の花束を、まことの母が”変な入れ知恵しないで!”とちひろさんの所に抗議に来た時には”まことの事を良く見て上げなよ!母親でしょ!”と言い返すシーン。
ー このシーンも、何となく、ちひろさんの子供時代が見えるようである。-

4.家族との食事が味がしないという悩み(家に居場所がない・・。冷たい雰囲気の家族4人での食事シーン。)を抱えるおかじ(豊嶋花)に、ちひろは”ヒミツの場所”を教えてあげる。
 又、まことが家の鍵を無くして家に入れなくなった時に、おかじに電話を掛けて助けを求めた際に、おかじの母が作ってくれた焼きそばを食べているときに、おかじが流した涙。
ー おかじが、真の親の愛を感じたから出た涙であろう。-

5.父親との軋轢で父をバットで殴って、家を飛び出した青年(若葉竜也)がラーメン屋で高圧的な態度を取る男を一括するシーン。店に入ってきたちひろさんが、青年に掛けた言葉。
”もう一回会ったら、殺しちゃいなよ。”で、SEXをする二人。
ー ちひろさんのややダークな姿が伺われる。-

<有村架純さんは、今や国民的女優のお一人だが、今作は彼女の微笑みに癒される作品であり、有村さん演じるちひろさんの描かれない過去に基づくと思われる、やや不可思議且つダークな姿が、不思議なる余韻を醸し出している作品である。>

■手元のフライヤーを見たら、フードスタイリストを飯島奈美さんが担当されている。道理で今作に出てくる多くのお弁当や食事が美味しそうに見える筈である。

NOBU