劇場公開日 2023年9月22日

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「ティーンの理想と低俗さを混ぜ込んだ世界観を、超絶的な映像技術で表現したらこうなった、という一作」ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック! yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ティーンの理想と低俗さを混ぜ込んだ世界観を、超絶的な映像技術で表現したらこうなった、という一作

2023年10月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

近年のアニメーション表現と技術の革新的進化により、2次元の原作(漫画、ビジュアルノベル)を3DCGでアニメ化した『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』や『THE FIRST SLAM DUNK』(2022)などの傑作が次々と登場していますが、本作は間違いなく、その中でも最高水準の作品です。さらに映像の技術的な水準はもちろん、劇中の音楽の使い方も素晴らしく、洋楽ファンにとっても見応えのある作品となっています。

『スパイダーマン』がアート作品としての傾向を強めている一方、本作はあえて、下水や害虫、ベトベトした何かなど、ティーン、というかもっと低年齢の子供達が面白がる「ちょっと気持ちの悪いもの」を強調する描写となっており、映像もそれに合わせて意図的に筆致を粗くしたり、造形を崩した描き方をしていたりしています。こうした表現は、もちろん『タートルズ』の原作が持つ世界観を踏まえたもので、世界最高峰のアニメ技術を、『タートルズ』世界の再現と再創造のために惜しげも無く捧げる、というジェフ・ロウ監督とプロデューサーのセス・ローゲンはじめとしたスタッフの熱意(カメ愛)が素晴らしい。

もちろんミケランジェロ達主人公4人、そして敵となるクリーチャー達も皆魅力的で、彼らが叶えたいと思っている夢、そして現実の自己に対する認識、頭の中で考えていること(ヒーロー的活躍)と現実の落差(やってることはコソ泥)などなど…、十代の若者だけじゃなく、かつて十代だった人も共感をせずにはいられないキャラクター達です。彼らに生命を吹き込んだ声優陣の豪華さも驚くほどで、鑑賞後に誰がどのキャラクターの声を担当したのか、答え合わせをして驚く、という楽しみ方もできそうです。

害虫や亀がどうしようもなく苦手…、という人に無理に鑑賞を勧めることはためらうものの、『タートルズ』ファンはもちろん、そうでない人(特に思春期の若者達を描いた物語が好きな人)には、劇場での鑑賞を強くお勧めしたい一作です!

yui