劇場公開日 2023年2月23日

「日本の風呂文化を斬新に描く」湯道 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5日本の風呂文化を斬新に描く

2023年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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本作は、日本の風呂文化の底辺と頂点を担う人達を描いている。底辺である銭湯に通う個性豊かな人達。一方、風呂文化を茶道等と同様の求道文化と考え、風呂文化の頂点である湯道を極める人達。従来、邦画では、風呂文化は大衆文化であり銭湯を中心にして扱ってきた。しかし、本作は、風呂文化を、従来を底辺、湯道を頂点として捉えた斬新なコメディである。観終わって風呂上りの様な心穏やかな気分になれる作品である。

本作の舞台は田舎の銭湯・まるきん温泉。父親が他界し、この銭湯を継いだ二人兄弟の弟・悟朗(濱田岳)に、東京から戻って来た建築家の兄・史郎(生田斗真)は、銭湯をマンションに建て替えることを提案するが、弟に反対される。一方、郵便局員の横山(小日向文世)は湯道会館に通い湯道を究めようとしていた。そんな矢先、まるきん温泉で火災が発生し悟朗が負傷したため、史郎が代役を務めることになる・・・。

昭和レトロ感漂う、まるきん温泉には、様々な人達が通ってくる。ちょっとした台詞のやり取りから彼らが紡ぎ出す、それぞれのサイドストーリーに味があり、彼らの人生が垣間見える。銭湯は人生の縮図であり交差点であることが実感できる。錚々たるベテラン俳優達の役柄に成りきった熟練の演技の賜物である。

湯道会館でのシーンも、師範役の窪田正孝、家元役の角野卓造が役柄に成りきっている。シリアスな雰囲気になりそうだが、そこは百戦錬磨の演者達の配役と、喜劇の原点である演者達の有り触れた事への大真面目な演技がコミカル風味を醸し出している。銭湯シーンとの乖離はない。

至高の風呂も登場するが、絢爛豪華で贅を尽くしたものとは真逆の素朴な原点である。風呂文化を極めれば極める程、無駄は無くなりシンプルになっていく。シンプルイズベストという頂点に近付いていくのだろう。

本作は、湯道という斬新な着眼点を加えたことで、風呂文化が日本人にとって掛け替えのないものであることが得心できる身も心も温まる作品である。

みかずき
すなぎもさんのコメント
2023年3月4日

コメントありがとうございます

『シンプルイズベスト』
この作品自体も当たり障りがないような王道と思えたが、だからこそ雰囲気や役者さんたちの演技に目がいき下手なことすれば大火傷。でも今作はバランスが上手くとれていた。かな
思い返せば今作もシンプルイズベスト
……だったのかも😁

すなぎも
Bacchusさんのコメント
2023年3月3日

コメントありがとうございます。
確かに湯道的なものは日本以外では生まれない文化でしょうね。
新たな作法を提唱していくとか言うのは現代でユニークでしたけど…シュールでしたねw

Bacchus