「全然大丈夫じゃない」ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
全然大丈夫じゃない
京都のとある大学に入学した七森は、入学後すぐに麦戸と意気投合し、一緒に過ごすようになる。
新入生勧誘のチラシを見てぬいぐるみを作る「ぬいぐるみサークル」に興味を持った2人は放課後部室へ見学に行く。
するとそこには個性的で優しい人たちとたくさんのぬいぐるみがいた。
イヤホンをして何やらぬいぐるみにぶつぶつ呟く部員たち。
そう、そこはぬいぐるみと喋るサークルだったのだ。
優しさとは。
優しさを扱った作品ではあるけれど優しさだけじゃないし、全然大丈夫だよと言いつつも全然大丈夫じゃない。
見かけによらず問題定期で突き放す映画だが、それが、それこそがリアルな気がして最終的には救いの映画になっている。
「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしいから、辛くなったらぬいぐるみとしゃべりなね〜」そんなタイトル通りのものには収まらない、いい意味で期待を裏切られる作品だった。
「優しさと無関心は似ているのかもしれない」
我ながら自分は優しい方だと思ってきた。
ただ、このメッセージを突きつけられて思う。
自分の優しさって本当に優しさなのか。
優しい人って危なっかしい。
白城さんと同じで自分も一晩寝れば忘れられるタイプ。
自分は優しい人じゃないかもしれないけど、それもまた優しさなんじゃないかと思ったり思わなかったり。
だから私もぬいぐるみとは話さない。かも。
優しさに答えはない。だからこそこの映画を観て感じて欲しい。そう思った。
元々興味はあったが、今回この映画を絶対に観ようと確信することになってしまったのは大阪アジアン映画祭での一件から。
胸糞悪いので詳細は省くが、監督に対するミソジニー的な発言などがあったらしい。
映画祭の現場にいた方の告発ツイートを読んだだけだが、よりによってこの映画でこんな悲しいことが起きてしまうのはかなりショックだった。
映画から学べとは言わないが、男性の有害性やそれによる生きづらさを映画という受け取りやすい媒体で訴えた監督本人がその思いをしなければならないなんて、考えただけで苦しい。
金子由里奈監督はあの金子修介監督の娘さんらしい。
監督の作品は今回初めてだったが、今後も頑張って欲しいし、彼女の作る映画を心から観たいと思った。
〈余談〉
あ、ちなみにすっっっごい個人的意見ですが、サークル内恋愛はあんまりおすすめしません。
by現役サークル内恋愛経験者