劇場公開日 2023年3月17日

  • 予告編を見る

「家族愛があれば、家族憎もある」The Son 息子 グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5家族愛があれば、家族憎もある

2023年3月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

たまたまなのでしょうが、家族愛をテーマにしたアカデミー賞作品も同時期に上映中。

小難しいことを言うつもりはないのですが、家族、ときたら〝愛〟が続くことが、さも当たり前のように語られ過ぎな気がします。世の中には、家族愛と同じくらい、家族憎という感情があるように思います。
平均寿命が50歳前後の時代までは、60歳まで生きる人が滅多にいなかったから、還暦のお祝いが特別なことでもあったし、70歳まで生きるなんて古来稀(まれ)だったんですよね。
働いて、稼いで、食べて、生きることだけで精一杯の環境では、家族の関係性は、愛よりも、家族がひとつの共同体として生き延びていくのに必要かどうかで成り立つという要素が強かった。
と書くと、そんなのは遥か昔のことのように思われる方もいらっしゃると思いますが、『82年生まれ、キム・ジヨン』の時代の韓国では、稼ぎ手となれる男の子を望む人が多いから、妊娠しても女の子だと分かるとかなりの割合で中絶させられたそうです。だから、統計上も有意なレベルで男性の方が人口が多かった時期がある(キム・ジヨンの原作の中にそう書いてありました)。ひとりっ子政策時代の中国でも、同じようなことがあったようです。

話が変な方向にずれましたが、授かったこどもへの愛ですら、こんなに不確かなのですから、性格も個性も別の人間である親と子どもが、相思相愛というのも、そうであって欲しいとは思うけれど、現実はなかなか難しい。

期待通りに育ってくれない我が子。
こどもの望む理想像にはほど遠い父、あるいは母。

当然、他の誰よりも長く一緒に暮らし、人間的な本質や本音を知る機会が多いから、強固な信頼関係も築けるし、逆に覆せないほどの不信しか持てないこともある。

もしかしたら、私個人の感性が、世の中の平均と大きく乖離しているのかもしれませんが、家族関係の中に無条件で自然体で変わらぬ愛情なんてものは無いと思ってます。
家族であっても、信頼関係を築いたり、壊さないお互いの努力は必要だし、高齢化社会になってからは、親(大人)の身勝手さも目立つようになった(50代で亡くなっていた時代には悪目立ちする前に亡くなった)。
配偶者との関係が長く続くためには、信頼関係を損なわないための努力が必要だし、自我が芽生えた子どもとの関係でも、極力、自分の決めつけによる押し付けがましさが出ていないか、キチンと聞く耳を持っているか、いつも意識しています。
などと書き連ねると、いつも緊張しっ放しで相当疲れてそうですが、割りとすぐに慣れます。
つまり、人間が意識や感情というものを獲得して以来、愛情という不確かなものよりは、他者とどう向き合うかを考え続けることのほうが自然体(本能)として身についている、ということです。愛に頼るより、信頼関係を育むほうが、共同体が生き延びる可能性が高いからです。

長々とつまらないことを書いてしまいましたが、つまるところ、家族愛の物語というのは、信頼関係の構築における失敗、恢復、成功、後悔の物語。
そして、人間として生まれてきた以上、誰もが生きていくうえで、経験したこと、いま経験していること、これから経験するかもしれないことばかりなので、登場人物の誰かしらに感情移入せずにはいられなくなる。

どなたにとっても、深く身につまされる作品だと思います。

そういえば、ところどころの場面で感情が強まる音楽が流れていたのですが、エンドロールの中に、なんと、ハンス・ジマーの名前が❗️
これ、なんだか得した気分になりました。

グレシャムの法則
2023年3月22日

返信ありがとうございます✿見ながら涙が頬をつたりました。グレシャム様も泣いてしまうかもしれませんが(汗)

美紅
2023年3月22日

天国からの奇跡の作品
大変、感動しました。
レビューだけでも見てください❀見る機会があったら嬉しく思います。

美紅
2023年3月22日

レビュー投稿があまりない作品でしたが今日観た

美紅
2023年3月22日

こんばんは、グレシャム様☆

美紅
2023年3月18日

確かに感情が高まる
インスピレーション、ひらめきを感じました❀

美紅
2023年3月18日

コメントありがとうございました☆

美紅
グレシャムの法則さんのコメント
2023年3月18日

ハンス・ジマーでした。
私の場合、クリストファー・ノーラン監督の作品など大作が多いイメージがありましたが、この作品もしっかりとマッチしてました。

グレシャムの法則
2023年3月18日

初めて聴いたのがその作品でずっと後になって名前を知りました。家族愛、人間ドラマが描かれていたのですね。

美紅
2023年3月18日

こちらの作品、音楽がハンス・ジマーだったのでしょうか。自分が若い時代に観たグリーンカードと言う映画でエンディングの音楽に心に響くものがありました。

美紅
2023年3月18日

こんばんは☆グレシャム様

美紅