劇場公開日 2023年1月27日

イニシェリン島の精霊のレビュー・感想・評価

全222件中、21~40件目を表示

2.0面白くなくはない。

2023年4月30日
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猛烈に地味だが、面白くなくはない。
先にムクレた男のキャラの理解し難さ、
感情移入し難さが最後までネック。
尤もらしいが。
結果、客を放置して幕。
唯一コリンファの退屈凡庸演は買うが。
非支持。

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きねまっきい

3.5鈍感さと田舎町がもたらす不幸

2023年4月24日
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鑑賞方法:VOD

仲の良いおじさんに、突然絶縁を言い渡された
おじさんの話。

鈍感さがもたらす不幸と
田舎町独自のコミュニティの生きづらさを
ひしひしと感じた作品でした。

主人公のおじさんは、
つまらないし人の気持ちがわからないという
なかなかの曲者なのですが
それに気づかず自分の主張を続けることで
まわりの人を不幸にしていきます。

仲の良かったおじさんをはじめとして
町の他の人や大事な人までも離れていくという
なんとか悲しい展開でした。
人の忠告にちゃんと耳を傾ける、
人の気持ちを考える、
当たり前のことですがそれを怠ると
人間関係が崩壊することを思い知りました。

主人公以外の町の人たちもなかなか
頑固な人が多かったです。
田舎を悪く言いたいわけじゃないのですが、
小さい田舎町でずっと育っていくと
いろんな角度で物事を見れなくなってしまう。
そして外で活路を見出そうとしなくなるんだなと
感じてしまいました。

全体的に暗い作品でしたが、
綺麗な景色とのギャップのおかげで
見入ってしまいました。

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マスノブ

5.0人間観察の凄み

2023年4月21日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

元は、というか何事もなければ出てくる人達はほとんどがいい人だ。
警官を除く。
ただ空気を読めるか否か、想像力があるか否かの違い。
イギリスの田舎のちっさい島でありながら日本の能面飾ってる男の家。
そりゃ山羊や羊の話しかしない男と話が合うわけが無い。
それを映画開始わずか数分で悟らせるのだから、もうこの作品の描き方が空恐ろしい。

例えてみれば上手くいってたと思ってた夫婦関係が、実は妻が我慢してたから成り立ってたもので、定年を迎えたら突然離婚を言い渡された夫、のような図式である。
夫=絶交を言い渡された側は何が悪いのかさっぱり分からない。

これが都会であれば他に目が向いて気が紛れるだろうが、何しろ島だ。逃げようがない。自分が拒絶されたってことを常に突きつけられないといけない。これはしんどい。

絶交する側の気持ちも分かる。SNSでもあれば承認欲求も満たされるものを、そんなもん無い時代だ。島を出るには歳をとりすぎた。

状況も人物造形も見事だ。この監督を追いかけていくしかない…完全敗北を認めた(なぜ勝負してるのか笑)。

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こまめぞう

4.0美しく雄大な自然とロバと犬

2023年4月18日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

何事も、相手への敬意を忘れてはならない。そして、行き違いが起きたときには、思慮の足りない行動、感情に任せた行動、強情な態度は慎まなければならない。

そんな当たり前のことを、対象的な二人を軸に見事なストーリーと映像美で教えられる。

1920年代の孤島と比べて、社会もとても複雑になった。しかし、雄大な景色と同じで、人は簡単に変わるものではないと突きつけられた気がする。

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komasa

4.0タイトルなし

2023年4月17日
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鑑賞方法:映画館

『イニシェリン島の精霊』鑑賞。少しだけ別の方向を向いた結果が転がり転がり、行き着く先は。どちらも正しくて、どちらも合ってなくて。むちゃくちゃ後引くな〜。

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こち

4.5物語の展開がどうなるのか、すごく引き込まれた作品でした。 映画とい...

2023年4月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

物語の展開がどうなるのか、すごく引き込まれた作品でした。
映画という技法を最大限に発揮された素晴らしい作品だなぁと感じました。
この映画を映画館で見れてとてもよかったです。
二人の今後の関係の展開も気になりました。

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波風龍雄

5.0純真な「愚者」の心に、怒りを呼び覚ました「賢者」の振る舞いもまた愚か

2023年4月13日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

1923年。
アイルランド本島では内戦が。
砲撃の音は島まで届く。
しかしイニシェリン島は差し迫った戦闘はない。
その島の牧畜家の中年男2人。
長年の親友コルムから突然絶縁を言い渡されたバードリック。
あまりのことに戸惑い、その事実を受け入れられない。
第一自分の何がそんなにコルムを怒らせてるのか?
考えても思いつかないのだ。

不条理劇のようでした。
監督はアイルランドが出自の劇作家でもあるマーティン・マクドナー。

2人はなぜ憎み合うようになるのか?
アイルランドの宗教対立が頭を横切ったり、
対話さえの拒絶する頑なさ、
和解を阻むものの正体がつかめない。
ただただ善良で退屈でお喋りな男パードリック(コリン・ファレル)
理由を言わずにただただ拒絶するコルム(ブレンダン・グリーソン)

コレルの拒絶は度を超えている。
バードリックが一回話しかけるごとに、自分の指を切り落とす。
そう宣言すると、コレルは実際に指を切り落とす。
狂っている・・・
そう、決め付けるのは簡単だが、実際にこんな理不尽な報復が
無いわけでは無い。
まぁ殆どは相手の指を斬り落とす。
(自分の指は切り落とさないと思う)
コルムの狂気が、バードリックにも連鎖する。
愛するロバのジェニーがコルムの切り落とした指を食べて、
喉に詰まらせて死ぬ。
もう善良で気の良いバードリックの面影はない。
ジェニーの報復に目を血走らせて向かう先は?

《映画の独創性極まりないストーリーの面白さに身震いした。》
私の中では10本の指に入る名作だ。

中年男の対立。
それだけでこれだけ多くの事が語れる。
謂れの無い拒絶からの諍い。
まるで戦争の要因を見るようでもあり、
宗教的対立からの《報復》
そしてどこまでも遠い《和解》

難しくて理解はできないけれど、対立とか憎しみ、
そしてはじまる戦争。
あるいは母親が子供を殺し、息子が父親を殺すような、
ギリシャ悲劇でも見ているようだった。

イニシェリン島はあまりにも美しい。
モーツアルトを熱愛するコルムの演奏するヴァイオリン曲。
ラストに流れる澄んだ女声のアイルランド古謡、
みんな美しい。

「この島に退屈以外の何を求めるのか?」
バードリックの妹のシボーン(ケリー・コンドン)は言う。
「人生に退屈以外の何を求めるのか?」
「人生は死ぬまでの暇つぶし」
などの問いかけがなされている。

そしてパードリックとコルムの決着はあまりに苦く、
和解には程遠く、パードリックの傷は簡単には癒えそうにもない。
そしてコルムの怒りの理由が今分かった。
馬糞の話で2時間も浪費するパードリックに、生い先短いと自覚した
コルムは耐えられなくなったのだ。
寛容を失ったコルム。
音楽を愛し仲間を持つコルム。
対するパードリックはコルム以外に親友はいなかった。
悲しさと孤独がパードリックを包む。

コリン・ファレル。
コリンと言えばコリン・ファースと思っていたが、
近年のコリン・ファレルの作品チョイスには驚かされる。
今作の監督・脚本のマーティン・マクドナーと組んだ
「ヒットマンズ・レクイエム」(ブレンダン・フレーザーと共に主演)は、
以前に観ました。
2人の殺し屋が、仕事(殺し)に悩む話し。
ファレルは「ロブスター」のヨルゴス・ランティモス監督作に主演した頃から
作家性の強い作品に出演しはじめる。
同監督の「聖なる鹿殺し」も面白かった。
コゴナダ監督作の「アフターヤン」
メジャー作品にも出演しつつ個性豊かなアート作品に進んで参加。
今後の出演作にもますます注目だ。

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琥珀糖

4.5アカデミー賞は残念でした

2023年4月12日
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泣ける

怖い

興奮

親友同士の断絶、友情の崩壊がもたらすドラマ・・・興味深い題材ですが、ブレンダングリーソンが自分の手の指を○○するのは、ちょっとやり過ぎというかわからない。そこまでする?みたいな。同じ監督作品としては「スリービルボード」の方が好きです

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活動写真愛好家

4.0なんで面白いんだろう。

2023年4月6日
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鑑賞方法:VOD

とても面白かった。
冒頭から突然始まる男同士の口喧嘩。

意固地になって、
簡単なはずのケンカはどんどん大事に。

こうやって人間は愚かしい争いをして行くんですよ。
と言う事なのか。

側から見たら馬鹿馬鹿しく、
妹だけが俯瞰で見れてたのだと思う。
兄の事を馬鹿にしてるけど貴方も相当な馬鹿よ、と。

静かな映画なんだけど、
クスッと笑える台詞や、
怪しい雰囲気、
ホラーな描写と飽きさせずに見せてくれる。

ただ、やってる事は中2の男子。
まるで自分のことのようだった。
遠ざけられると近づいて行く、
ほっときゃ良いのに気になって行く。
コリンファレルはまさに僕だった。

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奥嶋ひろまさ

4.0おっさん二人の仲違いの話で終わらない。

2023年3月30日
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鑑賞方法:VOD

不思議な映画です。
おっさん二人の仲違いの話です。
でも引き込まれます。
アイルランドの内戦が本土で行われていて
イニシェリン島でも同様のことが二人で行われていました。
ストーリーは島の中だけで進んでいき
世間から隔離された場所での出来事だけ。
島から出られない住人ばかりでコミュニティを形成する。
すごく小さい話ですが、住人にとっては大きな話でした。

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tom

3.0コメディっぽく進むのかと思ったらほぼホラー

2023年3月26日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

親友に「お前と話すのは退屈だから喋りかけるな」と言われたおじさんの話。
序盤は「俺よりあいつの方が馬鹿だよな」とかコメディっぽかったのに、親友の決意が狂気的で中盤以降はほぼホラー。

コルムが本当に賢いのなら、そもそもそんなこと言ったらどうなるかぐらいわかりそうなものだし、島を出ていかないのも謎。島の住民も途中から二人を放置しているようで、狂気に拍車をかける。

アイルランド本島の内戦と併せて、どこでも諍いは起こるといいたいのかもしれないけど、ちょっとコルムの行動が理解できない。喋りかけるなと言って完全無視するでもなく、手助けするようなところもあったし、最後も主人公を気遣うような部分もあった。
もうちょっと言動が一致したキャラにしてくれればよかったと思う。

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ひとふで

3.5コミュニティの中で起こりそうな出来事をラディカルに描いた

2023年3月24日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

ずっと同じコミュニティの中にいると、たまにその関係性に面倒さを覚え距離を起きたくなることはあるだろうし、逆に距離を置かれてしまうことで生じる疎外感も共感できる。一方で、作中でのその距離の置き方や疎外感への対処がラディカルすぎて衝撃的で、共感と衝撃がバランスよく?演出された作品である。

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にち

3.0いったい、何がしたかったのか?

2023年3月20日
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鑑賞方法:映画館

怖い

難しい

寝られる

結局、どちらもいい人で、それなのに一体何をしたかったのか、さっぱりわからん。

たしかに腹の立つところはあるにしても。
もう、縁を切りたいと思うほど、鼻につくところがあったにしても。

話し合うとか、言葉で伝えるとか、手紙とか、仲裁者入れるとか?

他にやりようがあったでしょ。

イニシェリン島という、特殊な環境が、人々を追い詰めるのか。

人生に絶望したからといって、独りよがりな行動はどうなんだろ?

12歳か!

ホントに、それ。

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ミツバチば~や

4.0愚かなロバと賢いイヌ

2023年3月18日
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知的

難しい

寝られる

時は1923年、内戦が起こっていたアイルランドの孤島、イニシェリン島。
島に住むパードリックはある日突然、友人のコルムから絶交されてしまう。
思い当たる節がなく納得のいかないパードリックは、コルムに理由を尋ね続けるが、コルムの拒否反応は次第に過激さを増していき…

友情とは何なのか考えさせられた。
婚姻関係や血縁関係と違って、何か明確な繋がりがあるわけではない。
友情ほど強い絆はないが、友情ほど儚いものもない。
強くも弱いその糸は明日には切れているかもしれない。
そんなことを考えてしまった。
コルムがなぜあそこまでパードリックを避け始めたのか。
結局のところはっきりとは分からなかったが、決して分からないこともない。
自分の指を切り落とし相手の家のドアに投げつける。
何故だか他人事として片付けられない。
1人だと寂しいけれどずっといると鬱陶しい。
かまって欲しいような、1人にして欲しいような。
好きだけど嫌い。嫌いだけど好き。
友情とはそういうものなのかもしれない。

舞台となったアイルランドのイニシュモア島とアキル島の自然は本当に美しいし、名優たちの会話劇も素晴らしいが、好きな人は好きだろうなという感じ。
なにしろ難解で静かな映画なので、深めたいけれどまた観たいかと言われたら微妙。
みんな大好きコリン・ファレルのハの字眉毛はまた観たいけど。
バリー・コーガンも加わって、聖なる鹿殺しならぬ聖なる〇〇殺しが行われる。
アカデミーは残念でした……

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唐揚げ

4.0ロバのつぶらな瞳

2023年3月14日
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 何とも不可思議な物語だ。思い出されるのは、血が滴る指、自然豊かな島の風景、吉兆•凶兆定かでない、天上から広がる光。そして何より、動物たちのつぶらな瞳が忘れがたい。美しさにおぞましさ、滑稽さ、悲愴感が無いまぜになった114分だった。
 ある日突然パードリックは、旧来の友・コルムから絶交を言い渡される。何が何だか分からず戸惑うパードリック。コルムが他の村人たちと楽しげに過ごしている姿を見ると、居ても立っても居られない。しかし、コルムは頑なな態度を崩さず、無理に話し掛けるならば、会話するごとに自分の指を一本ずつ切り落とすと宣言する。
 きっかけも、その後の展開も、コルムの身勝手のはず。とはいえ、彼がそのような行動に至るには、何か原因があるのではとパードリックは悩み、焦る。何とか修復を試みたものの、別の生き方をしたい(そこにパードリックはいない)と告げられ、彼は身も心も粟立つ。
 パードリックは、別のやり方、別の生き方の術を持っていない。毎日決まったように家畜たちの世話をし、午後になったらパブで酒を飲む。それで満たされていたはずが、友の離脱で歯車が狂い始めてしまう。
 習慣を守り日々を重ねるのは、単調ながら平和で、穏やかだ。一方、そこから踏み出すのは難しい。自他を傷つけ、周りの心もかき乱す。こんな季節だからかもしれないが、卒入学、就職に転勤と、半ば外因から人生が動くのは、変化を求めながらも踏み出せない、人の性が少なからず影響しているのかも、とふと思った。
 おどろおどろしさが加速する人間たちのやり取りの一方で、変わらず自然は雄大で、音楽は美しく、心に沁みる。さらに印象的なのは、パードリックの飼う羊や牛、そしてロバたちだ。特にロバのジェニーは彼にとって家族同然たが、妹には「家には入れないで!」と戒められる。
 動物の潤んだ黒目は、深みがある。人間たちの争いを達観しているようでもあり、呆れているようでもある。(もしかすると、人間には特段の興味さえ抱いていないかもしれない。)友と妹を失ったパードリックは、ことさらにジェニーを可愛がり、昼夜共に過ごすようになる。けれども、所詮はロバと人。彼らには越えられない壁がある。触れ合っても会話はできず、やり取りは一方通行で、距離は縮まらない。その瞳から何かを見出せるのは、受け手であるパードリック自身なのだ。
 砲弾の音が響けば、本島の内戦で屍は増える。そして、島でも喪失が増殖していく。幾つもの死を乗り越え、パードリック、そしてジェニーの瞳には、一体何が映ったのだろう。

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cma

4.0愚者と賢者のすれ違い、その果てにあるものとはといった様な内容の本作...

2023年3月11日
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愚者と賢者のすれ違い、その果てにあるものとはといった様な内容の本作
淡々とした話運びと先が見えない展開で、最後まで楽しませてもらいました
また、芸術や本といった形がある物以外にも時代を超えるものは確かにあるなと再確認させられた、なんともいえない余韻が残りとても良かったです

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nkbata

3.5こんなに引き込まれるおっさんの喧嘩は初めてだ。

2023年3月10日
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こんなに引き込まれるおっさんの喧嘩は初めてだ。

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ghostdog_tbs

3.5この島には住めないな

2023年3月9日
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鑑賞方法:映画館

2023年3月9日
映画 #イニシェリン島の精霊 (2022年)鑑賞

アイルランドの雄大な自然を舞台にしながらも、その自然の中に取り残され、何も変わらない日々を送る生活は息が詰まる

対岸の内線の方が生を感じられるのも皮肉なもの

#コリン・ファレル と #ブレンダン・グリーソン の名演も凄い

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とし

4.53.6) 孤島のマウント合戦

2023年3月9日
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鑑賞方法:映画館

二人の男の些細な喧嘩がやがて大事になっていく。
アイルランド内戦を遠景にした孤島の物語は、戦争が発生する仕組みをミニマイズする。

このプロット表層だけでも、茫洋な孤島の風景と相まって十分見応えがあるのだが、さらに本作が秀逸なのは、この喧嘩の理由が明らかではないこと。それによって、様々な解釈を可能にしているのだ。鑑賞前は「理由がなくても始まってしまう。それが戦争だよ」というニヒルな語り口を想像していたのだが、読後感はその真逆で、複数の(そしてそのどれもが人間臭い)理由が考えられた。観客に(遠い戦争の話ではなく)自分の物語として持ち帰らせる。そんな緻密な脚本に凄み。早くも年間ベストに入る一本だ。

★★以下ネタバレ★★

何通りかの解釈の内、私が感じ(自省した)裏テーマは「知性のマウント合戦」とも言うべき、醜いカーストの存在だ。

妹シボーン>コルム>警官ら島民>主人公>ドミニク
の順で「知性のカースト」が無意識に生まれ、みなが下の階層を蔑み「自分は上の人間だ」という行動原理で動いていた。警官が暴力を振るう相手は誰か?が一番わかりやすい例。「気のいい奴」設定の主人公すらドミニクへの接し方は微妙。あれほど狭い島でも、みなカースト上位を目指し下位の人間を遠ざける。

あの島で主人公に優しかったのは、おそらくシボーン、コルム、ドミニクだけ。そして友人とはいえ身内ではないコルムが、遂に耐えられなくなるところから本作が始まっているのではないか。そんな島の煉獄を抜け出したのは誰か?”死の精霊”の予言通りになったのは誰か?残念ながらこのカースト順位の通りになっているのが怖い(あのロバは主人公の身代わりだな)。

海と風と動物たちが、そんなマウント合戦を静かに見守る。

余談:
監督の前作『スリービルボード』は、本作と同じ構造を持ちながら好きになれなかった。その理由は主演の大女優様へのアレルギーと確信した。そういえば彼女の主演作どれも好きじゃないし。

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tsukareguma

2.0いにしえっぽいので一周回って差し支えない島名

2023年3月9日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

島に人々が住んでいる。
主人公の男が突然に友人に絶交されて、そこからギクシャクしていく話。
基本的には主人公に同情できる。
一見すると意味不明な内容であるが、戦争を人間に例えて虚しさを表現した作品だと思えばよい。
ややグロ注意。

良い点
・演奏
・アドレナリンで痛みがない(戦争)
・誰が死ぬかは分からないが誰かは死ぬ(戦争)
・犬
・演奏や犬は中立なるものなのだろう

悪い点
・死因設定が苦しい。誤解ともとれるが区別しづらい。

その他点
・強要罪、脅迫罪

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猪古都