「ロバは草食」イニシェリン島の精霊 ジョンスペさんの映画レビュー(感想・評価)
ロバは草食
アイルランドが舞台というと反射的にジョン・カーニーのさわやか音楽ものが思い浮かぶが、本作は、閉塞した島でおっさんたちがあたふたする話。で、その寓話的意味をあれこれ考えてね、ヒントは100年前の内戦、正解はどこにも書いてないから、みんなで話し合ってみ!みたいな。
いろいろ考察を始めると、ぶった切っちゃった先っぽをそのままにしてる意味や、ロバちゃんの紐状ウンコの話にまで答えを求めたくなるので、自分のない頭で考えてモヤモヤするより、著名な映画評論家の読み解きや公開から日が経ってたくさんあがっているレビューに膝を打つのが手っ取り早かった。
ただ、そこに意識を向けずとも、観ているだけで笑えたり哀しい気持ちになったり感情が揺さぶられ、また、どいつもキャラが立っていてなにかと楽しめる作品でもある。発達障害テイストが絶妙なバリー・コーガンの恋の行方や、退屈しのぎに人の手紙を勝手に開ける雑貨屋BBAの横柄さに、警帽被ってマッパで寝てるクソ警官。なによりコリン・ファレルが八の字眉一発でおかしみ・哀れみを誘ってくる。同じ眉毛キャラでも河野太郎のゲジゲジ眉はイラつくだけなのに(個人の感想です)。
まあ、ロバの糞の話を2時間するとか、実はお前が一番バカで孤独というのもやむを得ない気もするが、スマホどころかテレビもない時代、全員顔見知りで毎日パブでビール飲むしかない島ならではの煮詰まり感はじめ、現代の我々も他人事ではない話だと思った。
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