「アイルランド内戦が背景だけど」イニシェリン島の精霊 はちめさんの映画レビュー(感想・評価)
アイルランド内戦が背景だけど
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時代設定は、映画の中に出てくるように1920年代はじめのアイルランド内戦だ。日本人にとってはあまり馴染みはないが、その後のIRAを巡るテロなどの原点になった内戦だ。自らの指を切り落とすという凄惨な設定はテロなどによる悲劇を思い起こさせる。
ただこの映画の中で政治的な背景が語られるわけではなく、登場人物たちが理不尽な行動を取る理由は島の精霊(Banshees)であることがタイトルにより暗示されている。Bansheesは精霊と訳されていて土地などに宿る霊のことだが、妖精、妖怪などと訳したほうが分かりやすかったかもしれない。
このように考えるとこの映画は単にアイルランド内戦を巡る映画ではなく、閉鎖的な社会おいて起きがちが悲劇を表現しているのかもしれない。
ただ、映画に中ではかすかに希望も語られており、一つは動物に対する愛で、コリンは犬の命を救ってくれたことについてパドリックに対して素直に感謝の意を述べている。もう一つはパドリックの妹シボーンが勇気をもって島から離れ充実した暮らしをしていることだ。
映像や音楽は美しいが簡単な映画ではない。
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