「アカデミー好みだけど」イニシェリン島の精霊 Golgo14さんの映画レビュー(感想・評価)
アカデミー好みだけど
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哲学的すぎて難解。
前半部分でコルムが「下らない話で自分の残りの人生の時間を無駄にさせらるのはたまらない」と言うのはよく分かる。
コルム側からすれば「俺のことはほっといてくれ」と言っているのに、パードリックが一方的に接近しようとする、そんな構図は世の中にはよくある話であろう。
男と女が痴情のもつれで犯罪に至るケースは枚挙にいとまがない。
それが男同士の長年の友人関係の破綻でも同じじゃないだろうか。
そこを割り切れない片方がいるとこの作品のような事件が起きてしまう。
小さな島のムラ社会では、ましてや他に楽しみも無いパードリックにとってはなおの事、切実な問題として受け取ざるを得なくなってしまうのだろう。
だからこの作品の中で問題は何なのか見えなくなってしまっている。
コルムが自分の言い分をパードリックが守らないと言って、フィドラーにとって命の自分の指を詰めていく。
パードリックが自分のロバがコルムの切り落とされた指を喉に詰まらせて死んだからと言ってコルムの家を焼き打ちにする。
このような暴力的で狂気に満ちた設定はこの作品の価値を貶めているようで残念。
他の違った設定があったような気がするのだが。
敢えて理屈付けすればロシアのウクライナへの侵攻に対する抗議なのだろうか。
遠くにアイルランド内戦の砲撃の音が聞こえることもあって。
発達障害のようなドミニクが湖で溺死しているシーンは何を言わんとしているのかも不明。
今年度のアカデミー賞の主要部門にほとんどすべてにノミネートされているようで、幾つかは受賞するだろうが、監督のマーティン・マクドナーの以前の作品「スリー・ビルボード」のほうが物語性があって面白かった。
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