「自分も「考える人」になって観ないと気づけない」イニシェリン島の精霊 青りんごさんの映画レビュー(感想・評価)
自分も「考える人」になって観ないと気づけない
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2人の争いは同時に起こっている内戦の比喩なのでしょう。
指を切り落とすのは明らかに異常な行動だけど、あれほど拒絶されているのにしつこくつきまとう方もまた異常。
彼らの行動は異常なのに、そこに至るまでの彼らの気持ちには共感してしまう部分もあって、状況によっては誰しも異常な行動をとってしまう可能性があるのかな…?と考えてしまった。戦争の始まりも、最初はこういう感じなのだろうか。
パブの店主の「彼(コルム)は考える人だ。彼女(パードリックの妹)も考える人だ。お前(パードリック)は違う。いい奴だが、考えない人だ。」というセリフはあまりに的確で、スッキリした。
考える人は、考えない人と一緒にいるとフラストレーションが溜まり、いつか耐えきれなくなる。いい奴だけど「考えない人」であるパードリックは、相手の苛立ちや悲しみに気づけないから、本当の意味では「いい奴」ですらない。(可哀想だけど)
美しいけど閉鎖的で退屈なあの島で、倫理観のイカれた暴力警官や、不気味な老婆、嫌味な売店の店主に囲まれながら死ぬまで暮らしていかなければならない。
そんな中でこれからの人生について考えた時、パードリックから距離を置きたいと思ってしまう妹やコルムの気持ちにも共感できた。
気を抜くと気付けないような些細な描写が実はそれぞれ意味を持つ、繊細さがとても良い映画だった。
きっと自分も見逃している事が多いだろうから鑑賞した人達の色んな考察が聞きたくなる内容でした。
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