「作品全体がダウナー気分で常に根底に流れるペシミズム。 テレビ捨てて...」バルド、偽りの記録と一握りの真実 ゆきさんの映画レビュー(感想・評価)
作品全体がダウナー気分で常に根底に流れるペシミズム。 テレビ捨てて...
作品全体がダウナー気分で常に根底に流れるペシミズム。
テレビ捨ててメキシコに全然帰ってこないと叩かれた自分の経歴を揶揄したようなくだりが出てきたり、「成功を口に含んだら舌の上を転がして吐き出せ、でないと毒になるからな」「自分は父さんが与えたものを子供に与えられなかった。いい父になれなかった」とか、監督自身のこと?と思ってしまうような台詞の連続で、終始メタ的に自虐して見せる。
これを撮りながら常に死と隣り合わせだったのかも、、、と不安になる仕上がりだったし、産まれた子供がこの世が不安すぎるからと子宮に押し戻されるシーンは自身の子供を亡くしたトラウマがまだ根底にあるのかもだし、ギョッとするようなシーンもそれなりにあったので、全く万人受けではない。自省が行き過ぎると破滅に導かれる、この一言に尽きる映画。
足に楔を打たれるシーンは自分への戒めか。
虚構と現実がないまぜになり、どこまでが夢でどこまでが現実なのか、境目が曖昧。
「パパは白黒つけたがるけどそのままでいいこともあるの」
「そのままでいい」ことを体現するかのように、移民問題、メキシコの歴史、家族との衝突、アイデンティティの問題等等、全てが複雑に絡み合い、終始混沌としたまま漠然と観念的に展開される。
冒頭と終盤のシャドウジャンピングシーンを始め、絵的カタルシスを感じるシーンはたくさんあったが、終始観念的で、難解な作品であることは間違いない。
コメントする