劇場公開日 2023年2月17日

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「骨まで愛して」ボーンズ アンド オール 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0骨まで愛して

2023年6月12日
PCから投稿

RAW少女のめざめ(2018)やぼくのエリ(2008)を思わせる。
世間から隠れ、人と違う体質に葛藤している。
人食はしたいが非道はしたくない。

とてもそういうものを描いているとは思えない語り口でもっていく。
同情しにくいが人食をとったら自分探しのロードムービーになっていた。

マレン役テイラーラッセルはジェナオルテガに似ていた。
サリー(ライランス)やリー(シャラメ)と道連れになったり離反したり、人食と自分の出自に納得のいく答えを見つけようとする。
思春期らしく乱れる心象が描かれ、なぜこれが食人ネタのホラーになっているのか不可解なほどの逃避と恋愛と青春のドラマになっている。

ふたりの無頓着な気配がいちばんの魅力。着のみ着のままであちこちを巡る。からだが訴えるフリーダム。適当な服装とぼさぼさの髪とシャラメのだらしない英語。New Orderがかかって眺望がひらける。謳歌される若さ。
さすがルカグァダニーノだと思った。

とはいえ食人と青春はアンバランスだった。
が、ラストでようやく腑に落ちた。
なるほど「骨まで愛して」と言いたいために恋愛を描いたのか、と。

まったく気づかなかったがこれは城卓矢の1966年のヒット曲「骨まで愛して」を映像化したものだった。

すなわち、愛する彼氏をフルボーンズしちまった少女の悲哀の物語。
愛しているからあなたを食べる──という究極を描いていることでRAWやぼくのエリというより大島渚の愛のコリーダに近い映画になっている。

──と考えたら笑うところじゃないのだがなんか笑えた。サスペリアもそうだがグァダニーノの何がすごいって与太話を壮大に語ってしまうところじゃなかろうかw。

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津次郎