「骨まで丸ごと」ボーンズ アンド オール 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
骨まで丸ごと
当サイトの新作映画評論の枠に寄稿したので、ここでは補足的なことがらをいくつか書いてみたい。
まずタイトルの「ボーンズ アンド オール」は、直訳すると「骨とすべて」だけれど、マレンとリーが滝のある水場で過ごした後に出会う二人の男たちから語られるように、人の肉だけでなく骨まで全部食べることであり、それは至高の体験なのだという。
評論のほうで宗教とのつながりと、キリストの血と肉について言及したが、キリスト教で骨と肉に関して思い浮かぶのは、アダムの肋骨からイヴが創られたという聖書の記述。体の一部が愛する人になったという話と、愛する人の骨まで食べて一体になるというのは、対をなしているか、または循環しているようにも思われる。
「食べちゃいたいくらいにかわいい」という表現もある。人肉食は言うまでもなくはるか昔から忌避されてきたタブーなのだが、まだ文明人になりきらない進化の途上で、共食いは時々起きていたのかもしれないし、「イーター」と呼ばれる種族はそんな遠い昔に枝分かれした人種的なマイノリティーだ、なんて妄想する人がいてもいい。
それにしても、マーク・ライランスが演じるサリーを筆頭に、本作の大人たちは大抵どこか恐くて、同時に哀しい。それがまた、若い恋人たちとのコントラストとして効いている。
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