「ジャンルの枠に収まらないグァダニーノの最新作」ボーンズ アンド オール 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
ジャンルの枠に収まらないグァダニーノの最新作
1980年代後半のアメリカ中西部を、お互いが食人族と分かった若いカップル、マレンとリーが旅していく。旅の目的は幼い頃マレンを捨てた母親を探すこと。2人は旅の途中で恋に落ちる。果たして、彼らの行手に何が待っているのだろうか。
人喰いシーンは想像以上にリアルで、並のスプラッタ映画の比ではない。でも、それをカバーして余りあるのは、ラブロマンスとしての濃度だ。人肉を栄養にしてきたマレンとリーに訪れる衝撃の結末を含めて、これはむしろ、愛と欲望についての映画だと言える。
これまでも、ジャンル映画の枠をぶち壊してきたルカ・グァダニーノが、セクシュアリティの違いを超えた友情、または愛情の可能性を追求したTVドラマ『僕らのままで』にも勝るセンセーショナルな新作が、これ。もはやジャンル分けは不可能だし、グァダニーノがアメリカ映画進出第1作として本作を選んだのは、ある意味挑戦状だったのかも知れない。
ガリガリに痩せた美しい人喰いの青年、リーに扮したティモシー・シャラメが、監督の企みに喜んで協力しているように見える。ハリウッドアイドルの有り様は確実に変化している。
コメントする