配信開始日 2022年9月28日

「父の愛を求め続けて裏切られ続けた永遠の少女...  セルフプロデュースで糧を得て未来を失った大女優伝記作品」ブロンド O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5父の愛を求め続けて裏切られ続けた永遠の少女...  セルフプロデュースで糧を得て未来を失った大女優伝記作品

2022年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 本作では彼女が女優となってからスターダムに上り詰め、そのイメージに苦しみもがく姿を、結婚と恋愛と性にフォーカスしつつあぶり出しています。
 そしてどの道であれ、スターとなった人物は往々にして金銭面であったり対人関係であったり創源性であったり爆弾を抱えているものですが、果たして何が彼女のアキレス腱であったのか、という生き方の話でもあると思います。
 ともあれ、世の様々な男性のニーズにばかり迎合してしまったのが結果的にその後の彼女を苦しめ続けたのではないかと思います。もし孤児院時代に里親にNO!と自分の意志を突きつける女友達がいれば、モデル時代に自分の中に確固としたボーダーラインを持っていてオファー側の過剰な要求を断固拒否する女友達がいれば、女優になってから性接待や愛玩動物のような振る舞いを強いる周囲を毅然と固持する女友達がいれば、"ダム・ブロンド"と呼ばれる男性に都合の良いモンロー像の肥大化に待ったをかけてくれたのではないかと思います。
 それではあそこまでのスターに、あそこまで早くして成れなかったのかもしれませんが、その後のアルコールや薬物への依存を見れば美人薄命という美辞麗句では片づけられないはずです。
 本作を観る限り、彼女がセクシーなブロンド美女として出演した数々の全盛期のヒット作は製作側の覚えが良い一方で彼女にとっては忌まわしく、反対にそのイメージから脱却しようと我儘を貫いた晩年の作品は皮肉にも製作側には苦々しく興収という旨味の少ないものだったのでしょうか。
 彼女が己の既成イメージを打破しようとした作品を、セックスシンボルとしてではない形で記憶するのが一つの供養の在り方になるのではないかと思いました。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)