「「そんな人間は居ない」事にするグロテスクさ」蟻の王 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
「そんな人間は居ない」事にするグロテスクさ
1960年代、アリの研究者としてそして劇作家として知られていたアルド・ブライバンティとその教え子である青年との同性愛関係に対して、「教唆罪」(一個人をそそのかし完全に従属させた罪)という何にでも応用可能な罪名で裁いたという事実に基づくお話です。しかも、青年は「矯正施設」(同性愛は「矯正」すべき病の認識)にて、激しい電気ショックという拷問同様の「治療」を受けねばならなかったのでした。
イギリスでもフランスでもほんの数十年前まで同性愛は違法だった事は映画を通じて知っていましたが、カソリックの総本山イタリアではそんな法の縛りはなかったのです。それも「この国に同性愛者は存在しない。ゆえにそれを裁く法も必要ない」とのムッソリーニの意思を引きずっての事だったとは。
しかし、逆に言えば法の縛りがないから、同性愛者への無軌道な弾圧も可能になります。だから、「教唆罪」などという無理筋の法を持ち出してしょっぴく。権力の何とも愚劣な姿です。
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