「訳ありならず者たちがヒーローになった瞬間」サンダーボルツ* 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
訳ありならず者たちがヒーローになった瞬間
アベンジャーズはもう居ない。
こんな時、世界を救うのは…?
あちら(DC)ではもう結成して早々とリブートもされたが、こちら(MCU)では遅ればせながら結成した悪党チーム。
彼らは、サンダーボルツ*!
そのメンバーは…
エレーナ・ベロワ。レッドルーム出身の暗殺者で、ブラック・ウィドウの義妹。
バッキー・バーンズ。ヒドラの超人化計画で改造された超人兵士“ウィンター・ソルジャー”。
エイヴァ・スター。姿を消し、物質をすり抜ける能力を持つ“ゴースト”。
ジョン・ウォーカー。スティーヴの後、米政府から抜擢された“2代目キャプテン・アメリカ”。
アレクセイ・ショスタコフ。ロシアが造った超人兵士“レッド・ガーティアン”で、ブラック・ウィドウとエレーナの“父”。
アントニア・ドレイコフ。レッドルームで洗脳と改造され、相手の技をコピー出来る人間兵器“タスクマスター”。
各ヒーローと対したり、時には和解し仲間になったり、過ちを犯したり…。
ただヴィランと一括りには言えない、いずれも個性的で訳あり面々。
ヒーロー映画人気翳りからの回復の兆しの昨今。
彼らに託された任務は…?
実質主人公となるのは、エレーナ。確かに一番感情移入や我々視線になるかも。
義姉ブラック・ウィドウを亡くして以来、アレクセイとも疎遠になり、空虚な心のまま、ただ与えられた任務をこなすだけ。
その任務も人に褒められるものじゃない。
自分の仕事や立場から手を引く事を、雇い主に訴える。
彼女の雇い主というのが…
CIA長官のヴァル。アベンジャーズとも関係深いロス捜査官の元妻。
彼女には今、ある疑いが。
かつてCEOを勤めていた軍事会社“オックス社”で、極秘裏の人体実験。
それは非人道的で、危険で…。
が、ヴァルは真っ向から否定。全てを否定せず、それはアベンジャーズ無き今アベンジャーズに代わるものとなり、アメリカや世界を守るものとなる。
強気の姿勢を見せるが、議員や世論から弾劾され…。
そんな渦中のヴァルから新たな任務。
僻地にあるオックス社の保管庫にあるものとスパイを抹消。
遂行出来たらエレーナの訴えを考慮。
仕方なく任務へ。保管庫に侵入。その中に“居た”のは…
ゴースト、ウォーカー、タスクマスター。
彼らがスパイ…?
彼らを消せとの事だが、彼らも争い合い、襲撃してくる。
タスクマスターが死亡。後々復活したり、共に活躍するのかと思ったら、呆気なく…。
これで分かった。皆、同じ任務を与えられた。不要どもを殺し合わせて処分。保管庫にある“何か”と共に。
その“何か”とは…
一見平凡な青年、ボブ。おそらく何かの人体実験にされていたのだろうが、彼は何者…?
立場や主張でぶつかり合うが、反抗心だけは強いのが彼らの“特技”。
ここは一旦協力して、脱出を試みる。こんな所で裏切ったりしないよね…?
外にはヴァルや軍が。鼠一匹すら逃さない厳戒態勢。
ヴァルがひた隠すものとは…?
脱出成功まで後一歩の所で、兵に止められる。
その時ボブが囮になり、銃撃の嵐を受け…。
ショックを受けるエレーナだが、信じられない事が…。
あれほどの銃撃を受けたボブだが、傷一つ無く起き上がる。
…いや、空中に浮かび上がる。そして、空へ高く…。そこで力尽きたのか、落下。辺り一面衝撃波で吹っ飛ばす勢いながらも、ボブ自身は死なず。
ヴァルに身柄を拘束されるが、彼は何者…?
何とか逃げ切ったエレーナ、ゴースト、ウォーカー。
自分たちに起きた事、目の前で見た事、何をしたら、何処に向かっていいかも分からず…。
一台のリムジンが僻地をこちらに向かってくる。エレーナはイヤ~な予感。やはりそうだ。ハイテンションのアレクセイ。今回も期待通り笑わせてくれるぜ、親父!
追っ手。それを撃退したのが、バッキー。バイクにまたがり、現れるバッキーがカッコイイ! だけど、アレレ、エレーナたちを襲撃…。
集った5人だけど、各々意見や主張はバラバラ。
バッキーは4人を拘束。
エレーナはヴァルに嵌められ、利用された事。
ゴーストはほとほとうんざり、ウォーカーは皮肉しか言わない。
アレクセイに至っては、俺たちでチームを組んで敵に立ち向かう。サンダーボルツ*!
チーム結成以前の問題。そりゃあ皆、一匹狼のならず者たちばかりだもの…。
流れを変えたのは、一本の電話。バッキーにヴァルの秘書メルから。
ボブの身柄を押さえたヴァルはある場所へ。
かつてはトニー・スタークの居住であり、アベンジャーズが集った場。今はヴァルが買い取り、改築されているかのスタークタワー。久々の登場が感慨深い…。
正義の象徴であった場所でヴァルが企む計画…。
キーは無論、ボブ。彼は“セントリー計画”の人体実験被験者。
彼一人に、あらゆるパワーや能力を備えさせる。
つまり、彼一人で“アベンジャーズ”。
これまでの被験者は皆失敗し、死亡…。ボブだけがクリアした。計画も成功の矢先…。
ヴァルの目的は純粋に世界の平和の為だけではないようだ。ボブを操り、自身が強大な力と権力を持って…。
それを危惧したメルが連絡。
バラバラだったエレーナたちだが、当面の目的は決まった。
ヴァルの野望の阻止。
遂に出動! サンダーボルツ*! そう言い続けるアレクセイだが、そもそも何それ…? エレーナだけはうんざりだが…。
スタークタワーへ。
ヴァルやボブと対峙。
内向的な性格だったボブだが、金髪&レトロなスーツに身を包み、大胆イメチェン。
エレーナはボブに呼び掛けるが、ヴァルにマインドコントロールされたのか、“影”が強くなり…。
もう話し合いは埒が明かない。こうなりゃ力技で。
が…
相手は“一人アベンジャーズ”。幾ら超人兵士や特殊能力を持っていても、敵う訳ない。
スーパーパワー、不死身の身体、飛行能力、超速…。まるでス○パ○マン…!?
全く相手にもならず、5人揃っても一方的にやられ、エレーナたちは一旦退散。
勝ち誇るヴァルだが、ボブの影がどんどん強くなっていく。
何故あんたの言いなりに…?
そもそもあんたが言った。僕は全知全能の存在。それはつまり…。
ヴァルに襲い掛かるが、メルが助けに現れ、逃れる。
その時ボブの起動を止めたかに思えたが、それすら凌駕。
ボブの姿は完全に真っ暗闇に囚われる。目だけ光る姿が不気味…。
もはやボブではない。
手をかざしただけで人を消す。NYを闇に覆う。
世界の脅威、セントリー!
圧倒的な力のセントリー。ひょっとしたらサノス級…?
言わばダークサイドに堕ちたスーパーマンと闘うようなものだから、エレーナたちだけで一体どう闘うのか…?
真っ向からだったらまず勝ち目ナシ。絶望的。
そのエレーナたちも分裂状態。いや、元々チームとして纏まっていた訳ではないが…。
特にエレーナの闇は深い。
今のセントリーは、闇に堕ち囚われたボブの姿。
エレーナもセントリーの超能力で自身の闇を見た。
まだレッドルーム訓練の少女時代…。
あの時から抱えた悲しみ、苦しみ、孤独…。
今また義姉を失い、自身の心も空っぽ。
私自身もあんな姿になり得る。
誰かの手を…。救いを…。
手を差し伸べた者はいた。
何だかんだいい所持ってくぜ、親父!
家族じゃないか。
チームとか家族とか酔っ払い親父の戯れ言みたいに言ってきたアレクセイだが、実は誰よりも熱く真っ直ぐ。
セントリーが暴走。街に被害。人々に危害。
迷いは無かった。人々を助ける。
エレーナ、アレクセイ、バッキー、ゴースト、ウォーカー。
誰に指示される事も無く、各々の意志で。
チームとして初めて真に結束。
だが、セントリーの脅威にどう立ち向かえばいいのか…?
かつてのアベンジャーズのように、バラバラだった個性的面子が一つになっていく様は分かっているド定番でも熱い。
スーパーパワーは無い。故にアベンジャーズ級の大スケールアクションは無い。
が、己の身体や能力を駆使して、肉弾戦メインで挑む姿は熱量充分。
エレーナのしなやかアクション、バッキーの登場シーンのカッコ良さ、皆で人々を助けるクライマックスは胸アツ。
もっと悪党ならではのヤバさやはっちゃけを見たかったという声もあるだろう。
だが、そもそも彼らは凶悪ヴィランではない。それぞれ苦悩や心に傷を抱えた人間。
ならず者、落ちこぼれでもない。
この瞬間、彼らはヒーローになった。
セントリーとの対決。
力で敵わないなら…。察しは付いた。
スーパーヒーローがその能力やパワーで敵を倒すなら、何のスーパーパワーを持たない彼らは“心”や“話し合い”で。
その対比も印象的。
敵を倒すだけがヒーローじゃない。手を差し伸べ、助け救うのが真のヒーローだ。
興奮、笑い、意外なメッセージや感動…。王道展開をそつなく。
キャラの個性、キャストの熱演とアクション。
フローレンス・ピューやセバスチャン・スタン推しが多いだろうが、私ゃやっぱりデヴィッド・ハーバー!
そうそう、彼がずっと言っていた“サンダーボルツ*”! メインタイトルであり一応彼らのチーム名だからカッコイイ由来かと思ったら…。
でも、いいじゃないか。サンダーボルツ*!
からの…
ニューアベンジャーズ!
えっ、本当に…?
商品登録巡って“シビル・ウォー”しないでね…。
調子を取り戻してきたMCU。
これなら歴代メンバーと並んでも見劣りナシ。
次は、MCUリブートによる元祖ヒーローチームだ!
共感ありがとうございます。
そして、近大さんの明確でわかりやすいあらすじありがとうございます。
自分は序盤の良いところを見逃してしまったようで、大変役立ちました。
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