「90年代NYストリートカルチャーのうねりを生々しく伝える」All the Streets Are Silent:ニューヨーク(1987-1997)ヒップホップとスケートボードの融合 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.590年代NYストリートカルチャーのうねりを生々しく伝える

2022年10月29日
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ラリー・クラーク監督の「KIDS キッズ」はその作品世界に90年代NYストリートの空気を濃密なまでに封じ込めた名作として知られるが、本作「All the Streets are Silent」は当時巻き起こっていた生々しいカルチャーのうねりを、点ではなく、一つの線として理解する上で極めて有効だ。ウォーホールやバスキアの時代が終焉を迎えアートの世界に空白が生じた80年代の終わり、クラブ・マーズが一つの出会いの場所となり、この街で刻々とヒップホップとスケートボードの融合と化学変化が起こり始める。さらにはズーヨーク、シュプリーム、Mixtapeの誕生、そしてひときわ個性を輝かせていたハロルド・ハンターのことなど、ハンディカムと共にあったカルチャーならではの貴重な記録映像が嬉しい。今の世界がこれほど分断に満ちているせいだろうか、本作で架け橋となった人、場所、才能がとりわけ尊い存在に思えてならない。

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牛津厚信