劇場公開日 2022年9月2日

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「穴好きな人には、まずお試しあれ(^^ゞ」地下室のヘンな穴 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5穴好きな人には、まずお試しあれ(^^ゞ

2022年9月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 よくまぁこんな内容で、「トップガン」に次ぐフランス映画No.1の大ヒットになったものだと感心しました。
 新居の地下には12時間進んで3日若返る奇妙な穴があるという、パワーを持った穴によって人生が一変していく夫婦の世にも奇妙な物語を描いた本作。 監督は“フランスのスパイク・ジョーンズ”の異名をとるカンタン・デュピュー。意思を持つ殺人タイヤの『ラバー』、鹿革ジャケットに取りつかれた男の狂気『ディアスキン 鹿革の殺人鬼』などの異色作、怪作で知られる仏映画界でオンリーワンの鬼才です。最新作には同国の名だたる人気俳優が集結。中でも、主人公の上司を演じたブノワ・マジメルの怪演は見逃せません。かつて希代の美青年として一世を風靡したスター俳優が持ち前のイケメンぶりをかなぐり捨て男の滑稽さと悲哀を体現しています。

 誰もがポカンとしてしまうほど、浮世離れした突飛な設定で驚きと笑いを呼び起こしながら、 人生や人間の普遍的な本質を巧みにあぶり出す独創性に満ち溢れた映像世界。そんなぶっ飛びすぎた設定に、皆さんはついていくことができるでしょうか。

 物語は緑豊かな郊外に建つモダニズム風一軒家の下見に訪れた中年夫婦のアラン(アラン・シャバ)とマリー(レア・ドリュッケール)。購入すべきか迷う夫婦に怪しげな不動産業者がとっておきのセールスポイントを伝えるのです。地下室にぽっかり空いた“穴”に入ると「12時間進んで、3日若返る」というのです。夫婦は半信半疑でその新居に引っ越します。やがてこの穴はふたりの生活を一変させていくのでした。穴に入り浸って若返り、夢だったモデルになることを目指すマリー。穴に入っている間の一定時間は、出てこれないため夫のアランともすれ違うことに。
 アランは自分をそっちのけで穴にはまるマリーに不満をいだきつつも、次第に情緒が不安定になっていく妻の健康が気になっていきます。そして穴の特殊な効果の乱用に疑問を持つようになっていくでした。
 はたして、この不思議な穴がもたらすのは幸せか、それとも破滅か。人生が激変してしまった夫婦がたどる後戻り不可能な運命とは…。

 まずこの作品の大きな問題は、摩訶不思議な穴という主題のネタを喰ってしまう余計なネタが、脈絡もなく投入されていることです。
 具体的にいうと、転居祝いに招いたアランの勤務先の保険会社の社長ジェラール(ブノワ・マジメル)が酔った勢いで、秘密を告白。最近ペニスを日本製の電子ペニスに変えたというのです。電子ペニスはその後トラブルを起こし、ジェラールが日本で電子ペニスの修理のための手術を受けるところまで描きこんだものだから、本編中盤ですっかり本題の穴の話が霞んでしまったのです。
 それにしても穴の顛末は強烈。そんなのアリか‼アリ得ないという強引なオチのつけ方で終わってしまいました。
 穴好きな人には、まずお試しあれ(^^ゞ

流山の小地蔵